
作品番号 1626235
最終更新 2021/01/26
産声が聞こえた。
不思議なことに、その声は自分自身の意識にも強く残っている。
喜んでいるのは両親だろうか?
未発達の視界ではボヤけてよく見えないけど、とても嬉しそうに笑っているのは伝わる。
「見たか今の!」
「ええ、間違いないわ」
「赤ん坊でこれ程の魔力を持って生まれるとは! この子は間違いなく神童になる。いや、もしかすると我が一族から百年ぶりに『|聖域者《パラディン》』となれる逸材だ!」
赤ん坊の名前はリンテンス。
由緒正しき魔術師の名門、エメロード家の次男として爆誕。
その五年後。
両親の期待に応えるように成長し、神童と呼ばれるようになった。
「リンテンス! 次は炎の魔術だ!」
「はい!」
心臓と同じ高さ、場所は逆。
右胸を起点にして、生成された魔力を循環させる。
循環させた魔力は、術式を介すことで様々な効果を発揮する。
例えばこんな風に――
「炎の檻よ」
燃え盛る炎を生成し、縦横を重ねた檻を形作る。
攻撃と拘束、二つの意味を持つ魔術。
「どうですか? 父上」
タラっと汗を流す父上。
ニコリと笑い、俺に言う。
「完璧だ、リンテンス」
「ありがとうございます!」
五歳になった俺は、父の指導のもと魔術の訓練に勤しんでいた。
初めて魔術を使ったのは三歳の頃。
文字の読み書きや一般教養を習うついでに魔術の基礎を学び、こっそり独学で実践訓練をしていたら、父上にバレてしまった。
怒られたとかはなくて、むしろものすごく褒められた。
三歳で魔術が使えた者など、歴史に名を遺す偉大な魔術師たちでも僅かしかいない。
この頃からだったと思う。
俺、リンテンス・エメロードが神童と呼ばれるようになったのは。
さらに月日は流れ――
不思議なことに、その声は自分自身の意識にも強く残っている。
喜んでいるのは両親だろうか?
未発達の視界ではボヤけてよく見えないけど、とても嬉しそうに笑っているのは伝わる。
「見たか今の!」
「ええ、間違いないわ」
「赤ん坊でこれ程の魔力を持って生まれるとは! この子は間違いなく神童になる。いや、もしかすると我が一族から百年ぶりに『|聖域者《パラディン》』となれる逸材だ!」
赤ん坊の名前はリンテンス。
由緒正しき魔術師の名門、エメロード家の次男として爆誕。
その五年後。
両親の期待に応えるように成長し、神童と呼ばれるようになった。
「リンテンス! 次は炎の魔術だ!」
「はい!」
心臓と同じ高さ、場所は逆。
右胸を起点にして、生成された魔力を循環させる。
循環させた魔力は、術式を介すことで様々な効果を発揮する。
例えばこんな風に――
「炎の檻よ」
燃え盛る炎を生成し、縦横を重ねた檻を形作る。
攻撃と拘束、二つの意味を持つ魔術。
「どうですか? 父上」
タラっと汗を流す父上。
ニコリと笑い、俺に言う。
「完璧だ、リンテンス」
「ありがとうございます!」
五歳になった俺は、父の指導のもと魔術の訓練に勤しんでいた。
初めて魔術を使ったのは三歳の頃。
文字の読み書きや一般教養を習うついでに魔術の基礎を学び、こっそり独学で実践訓練をしていたら、父上にバレてしまった。
怒られたとかはなくて、むしろものすごく褒められた。
三歳で魔術が使えた者など、歴史に名を遺す偉大な魔術師たちでも僅かしかいない。
この頃からだったと思う。
俺、リンテンス・エメロードが神童と呼ばれるようになったのは。
さらに月日は流れ――
- あらすじ
- 魔術の才能が全てを決める世界で、名門貴族エメロード家の次男として生まれたリンテンス。
類まれなる才能をもち、神童と呼ばれていた彼は、いずれ魔術師の頂点である聖域者(パラディン)になることを夢見ていた。周囲からの期待も厚く、何もかも順調だったある日、突然悲劇は起こる。
神童から出来損ないになったリンテンスは、一人ぼっちで絶望の淵にいた。自死すら考えた彼を救ったのは、聖域者のアルフォースに出会う。