悪魔の強さを痛感する。
戦えているのは、結界の付与効果あってこそ。
アクトのフォローもあって何とか凌いでいるが、長く続かないことは明白だった。
「よく頑張りますね。無駄な足掻きだというのに」
「無駄なものか」
「リンテンス君が戻ってくるまで、私たちが守るんだ!」
「そうですか。希望を持つなど弱々しい限りだ。上をごらんなさい」
彼らの頭上では、アルフォースとグレゴアが激闘を繰り広げていた。
二人の戦いは互角……いや、僅かにアルフォースが押されている。
「いずれあちらも決着がつきます。遅かれ早かれ、君たちは死ぬ」
「っ……」
「頑張らなくてもいいのですよ? そんなことをしても余計に恐怖を感じるだけだ。私にゆだねて頂けば、苦痛なく最後を迎えるられますよ?」
「必要ないよ。アルフォース様は負けないし、リンテンス君も来てくれる。それに……私たちだって、まだ負けてないよ」
シトネがカチャリと刀を構えなおす。
グレンたちも同様、戦う姿勢を崩さない。
それがエクトールは気に入らなかった。
「わかりました。私も少々飽きてきましたので――」
エクトールは右腕を挙げる。
頭上には空を埋め尽くすほどの方陣術式が無数に展開される。
四人とも感じ取る。
先ほどまでとは比べ物にならない魔力の流れを。
「終わりにしましょう」
方陣術式から放たれるエネルギーは、一斉に辺り一面を抉る。
雨ではなく、滝のように降り注ぐ攻撃。
躱す場所などなく、防御に徹するしかなかった。
「貴方たちの魔力では防げない威力だ。いかに結界の効果があろうとも……ほう」
「はぁ……はぁ……」
「お兄さん!」
「今のを防いだか」
攻撃が放たれる直前、アクトは回避困難だと悟った。
三人とも結界障壁を展開したが、攻撃を防げる強度ではない。
そこで彼が発動したのは、時間魔術の奥義――クロノスタシス。
止まった十秒という時間の中で、アクトは三人の結界障壁を、自身の魔力を流し込むことで強化した。
その後、残った時間で学校を覆っている結界内に避難、自身の身も護った。
エクトールがアクトに再び興味を示す。
グレンは彼が奥義を発動したことに瞬時に気付き、もう戦えないと悟る。
今しかない。
「セリカ!」
「畏まりました」
セリカがグレンの意図を悟る。
グレンが真紅を放ち、セリカが竜巻を発生させる。
炎を纏った竜巻がエクトールを襲う。
「風の力で炎を強化しているのですね。しかしこの炎はもう見飽きましたよ」
「どうかな?」
グレンが不敵に笑う。
「これは……削っているのか? 私の障壁を」
真紅と竜巻の合わせ技は、エクトールの結界障壁を削っていた。
強度な結界も万能ではない。
試行錯誤することで、打ち破ることも出来る。
リンテンスという男を知っている彼らにとって、不可能だと思うことのほうが難しい。
そして――
弱まった障壁ならば、彼女の刀でも貫ける。
「追閃」
光魔術で強化された突き。
光の線が引かれるように、一直線にエクトールの喉元へ伸びる。
「――惜しかったですよ」
万事を尽くした一撃すら、彼は容易に躱していた。
紙一重で、喉元から血を流しながら、頭上に巨大な術式を展開する。
眩しい光が周囲を覆う。
次の瞬間、激しい罰発音と共に、結界ごと周囲が崩れる。
「一瞬遅ければ、私も危なかった」
「っ……」
「やはり油断ならない結界だ。今のを受けて生きているとは」
結界の効果に守られ、四人とも意識を保っている。
しかし戦える状態ではない。
シトネは何とか立ち上がろうとしている。
そんな彼女の元へ、エクトールが歩み寄る。
「まだあきらめませんか?」
「……絶対……負けない。リンテンス君が来るまで……」
「ふっ、その諦めの悪さだけは認めてあげましょう」
シトネに、エクトールの攻撃が迫る。
「さようなら。勇敢で無謀なお嬢さん」
雷が走る。
爆発音と共に地面が弾け飛び、土煙が舞う。
「さて、では建物を――!?」
エクトールは土煙の中を凝視する。
攻撃は確実に当たったはずだ。
威力も十分で、耐えられるものではなかった。
それなのになぜ、人の影が見える?
「しかも二つ? 何者ですか?」
土煙が晴れていく。
そこに立っていたのは、シトネを抱きかかえたリンテンスだった。
「リンテンス……君?」
「ああ。待たせてごめんな? シトネ」
「ううん! 来てくれるって信じてたよ」
間一髪、攻撃が当たるギリギリで彼女を守っていた。
破壊されたのは地面のみで、シトネに怪我はない。
リンテンスは頭上を見上げる。
「師匠!」
「その声! ようやく来たんだね」
「はい! お待たせしてすみません」
「いいとも! そんなことより任せていいかな?」
「もちろんです」
リンテンスは視線をエクトールに戻す。
すると、エクトールが呟く。
「貴方がリンテンス・エメロードですか」
「俺のことを知っているのか?」
「ええ。脅威となり得る魔術師の一人として、情報は得ていますよ。この場で見かけなかったのは不自然でしたが、何かしていたようですね」
エクトールは経過している。
故に攻撃を仕掛けてこない。
「シトネ。結界をもう一度発動できる?」
「う、うん! 出来るよ」
「じゃあ頼むよ。俺はあいつを倒してくるから」
「うん。頑張ってね、リンテンス君」
「ああ」
リンテンスはシトネを下ろし、エメロードの前に出る。
その隙に、シトネが結界を再発動。
他の三人もそれに合わせて、魔力を注ぎなおした。
「ここからは俺が相手だ」
戦えているのは、結界の付与効果あってこそ。
アクトのフォローもあって何とか凌いでいるが、長く続かないことは明白だった。
「よく頑張りますね。無駄な足掻きだというのに」
「無駄なものか」
「リンテンス君が戻ってくるまで、私たちが守るんだ!」
「そうですか。希望を持つなど弱々しい限りだ。上をごらんなさい」
彼らの頭上では、アルフォースとグレゴアが激闘を繰り広げていた。
二人の戦いは互角……いや、僅かにアルフォースが押されている。
「いずれあちらも決着がつきます。遅かれ早かれ、君たちは死ぬ」
「っ……」
「頑張らなくてもいいのですよ? そんなことをしても余計に恐怖を感じるだけだ。私にゆだねて頂けば、苦痛なく最後を迎えるられますよ?」
「必要ないよ。アルフォース様は負けないし、リンテンス君も来てくれる。それに……私たちだって、まだ負けてないよ」
シトネがカチャリと刀を構えなおす。
グレンたちも同様、戦う姿勢を崩さない。
それがエクトールは気に入らなかった。
「わかりました。私も少々飽きてきましたので――」
エクトールは右腕を挙げる。
頭上には空を埋め尽くすほどの方陣術式が無数に展開される。
四人とも感じ取る。
先ほどまでとは比べ物にならない魔力の流れを。
「終わりにしましょう」
方陣術式から放たれるエネルギーは、一斉に辺り一面を抉る。
雨ではなく、滝のように降り注ぐ攻撃。
躱す場所などなく、防御に徹するしかなかった。
「貴方たちの魔力では防げない威力だ。いかに結界の効果があろうとも……ほう」
「はぁ……はぁ……」
「お兄さん!」
「今のを防いだか」
攻撃が放たれる直前、アクトは回避困難だと悟った。
三人とも結界障壁を展開したが、攻撃を防げる強度ではない。
そこで彼が発動したのは、時間魔術の奥義――クロノスタシス。
止まった十秒という時間の中で、アクトは三人の結界障壁を、自身の魔力を流し込むことで強化した。
その後、残った時間で学校を覆っている結界内に避難、自身の身も護った。
エクトールがアクトに再び興味を示す。
グレンは彼が奥義を発動したことに瞬時に気付き、もう戦えないと悟る。
今しかない。
「セリカ!」
「畏まりました」
セリカがグレンの意図を悟る。
グレンが真紅を放ち、セリカが竜巻を発生させる。
炎を纏った竜巻がエクトールを襲う。
「風の力で炎を強化しているのですね。しかしこの炎はもう見飽きましたよ」
「どうかな?」
グレンが不敵に笑う。
「これは……削っているのか? 私の障壁を」
真紅と竜巻の合わせ技は、エクトールの結界障壁を削っていた。
強度な結界も万能ではない。
試行錯誤することで、打ち破ることも出来る。
リンテンスという男を知っている彼らにとって、不可能だと思うことのほうが難しい。
そして――
弱まった障壁ならば、彼女の刀でも貫ける。
「追閃」
光魔術で強化された突き。
光の線が引かれるように、一直線にエクトールの喉元へ伸びる。
「――惜しかったですよ」
万事を尽くした一撃すら、彼は容易に躱していた。
紙一重で、喉元から血を流しながら、頭上に巨大な術式を展開する。
眩しい光が周囲を覆う。
次の瞬間、激しい罰発音と共に、結界ごと周囲が崩れる。
「一瞬遅ければ、私も危なかった」
「っ……」
「やはり油断ならない結界だ。今のを受けて生きているとは」
結界の効果に守られ、四人とも意識を保っている。
しかし戦える状態ではない。
シトネは何とか立ち上がろうとしている。
そんな彼女の元へ、エクトールが歩み寄る。
「まだあきらめませんか?」
「……絶対……負けない。リンテンス君が来るまで……」
「ふっ、その諦めの悪さだけは認めてあげましょう」
シトネに、エクトールの攻撃が迫る。
「さようなら。勇敢で無謀なお嬢さん」
雷が走る。
爆発音と共に地面が弾け飛び、土煙が舞う。
「さて、では建物を――!?」
エクトールは土煙の中を凝視する。
攻撃は確実に当たったはずだ。
威力も十分で、耐えられるものではなかった。
それなのになぜ、人の影が見える?
「しかも二つ? 何者ですか?」
土煙が晴れていく。
そこに立っていたのは、シトネを抱きかかえたリンテンスだった。
「リンテンス……君?」
「ああ。待たせてごめんな? シトネ」
「ううん! 来てくれるって信じてたよ」
間一髪、攻撃が当たるギリギリで彼女を守っていた。
破壊されたのは地面のみで、シトネに怪我はない。
リンテンスは頭上を見上げる。
「師匠!」
「その声! ようやく来たんだね」
「はい! お待たせしてすみません」
「いいとも! そんなことより任せていいかな?」
「もちろんです」
リンテンスは視線をエクトールに戻す。
すると、エクトールが呟く。
「貴方がリンテンス・エメロードですか」
「俺のことを知っているのか?」
「ええ。脅威となり得る魔術師の一人として、情報は得ていますよ。この場で見かけなかったのは不自然でしたが、何かしていたようですね」
エクトールは経過している。
故に攻撃を仕掛けてこない。
「シトネ。結界をもう一度発動できる?」
「う、うん! 出来るよ」
「じゃあ頼むよ。俺はあいつを倒してくるから」
「うん。頑張ってね、リンテンス君」
「ああ」
リンテンスはシトネを下ろし、エメロードの前に出る。
その隙に、シトネが結界を再発動。
他の三人もそれに合わせて、魔力を注ぎなおした。
「ここからは俺が相手だ」