彼女はフードを被っていた。
茶色いフードは俺とぶつかった衝撃でヒラリとあがる。
そこから文字通り顔を出して、黄色の綺麗な髪がサラッと見える。
おでこを押さえている手が邪魔をして、左目は見えないけど青い右目はハッキリ見えていた。
透き通るような白い肌は整っていて、触らなくてもモチモチしている感じが伝わってくる。
スレンダーで胸は小さめ。
一言で表すと、可愛い女の子だ。
いや、そんなことよりも……
耳と尻尾が付いている。
耳と言うのは人間の耳ではないし、尻尾は当然人間にはない。
大昔はあったとか聞いた気がするけど、現代の今はあり得ない。
しかし、目の前の彼女にはどちらもある。
黄色と白のフサフサした耳に尻尾。
形状からして、狐のそれだろうと思う。
俺とぶつけたおでこは赤くなっていた。
相当痛かったのか涙目になっている。
「痛いなぁ……って、え? 人間だったの!?」
「い、いやこっちのセリフなんだが!」
思わず大きな声で反論してしまった。
まさかの発言だったから、ついつい動揺してしまったようだ。
「あ、いやごめんなさい! そういう意味じゃなくて、あんまり硬いから岩か何かにぶつかったのかと思って……まさか人だったなんて」
「あぁ、そういうことか」
少しほっとした。
「ごめんなさい! 急いでてあんまり前を確認してなくて」
「いや良いよ。それより大丈夫?」
「大丈夫です!」
「そう? おでこかなり腫れてるけど」
時間が少し経過して、より腫れが強くなっている。
あからさまにコブが出来ているぞ。
ちなみに俺は大丈夫だ。
強化魔術の使用中だったから、あの程度で怪我はしない。
まっ、強化魔術を使っていた所為で強い衝撃を生んでしまったわけだが……
「平気です! 自分で治癒できますから!」
「治癒?」
彼女は左手を自分の額に近づける。
すると、方陣術式が展開され、淡い光が額に注がれる。
彼女が使っているのは治癒魔術だ。
それも無詠唱だし、魔力の流れも悪くない。
相当訓練されているのがわかる。
治療が終わり、額のコブが綺麗に消えた。
ニコッと笑う彼女に、俺から質問する。
「えっと、君も魔術師なの?」
「はい! そういうあなたも?」
「ああ。俺はリンテンス」
「私はシトネ!」
シトネ、変わった名前だな。
王都の出身ではなさそうだけど。
「シトネは何でここに?」
「えーっと、実は私、魔術学校の入学試験を受けに来たの」
「そうなのか。じゃあ俺と同じだな」
「え、リンテンス君も? じゃあ同い年なんだ」
「ああ」
どう見えていたんだか。
「試験に向う途中だったとして、何でこんな森に?」
「それはね、私の村が王都の外にあって、ここを通るのが一番近道だったからだよ。でもちょっと寝坊しちゃって……」
「それで慌てて走ってたわけか」
「うん。リンテンス君は?」
「俺は試験前に身体を動かしとこうと思って」
「そうなんだ」
シトネとの話が進んでいく。
彼女がこの森にきた理由とか、目的はわかった。
って違う!
そこも気になっていたけど、一番知りたいのはそこじゃない。
もっとこう……見た目的な意味だ。
「あのさ……その耳と尻尾って……本物?」
「え? うん、本物だよ」
本物か。
ということは、やっぱり彼女は――
「先祖返りなのか」
「うん」
先祖返り。
今から数千年以上昔には、人間以外にもたくさんの種族が存在したらしい。
そのうちの一つに獣人種と言う、獣と人間が混ざり合ったような種族がいた。
現代ではいなくなってしまった種族だけど、遺伝子は俺たちの中に残っていて、時折その遺伝の影響から、先祖の姿が身体に現れることがある。
彼女の場合は見た目通り、狐の獣人を先祖に持っているのだろう。
文献で見たり、話には聞いていたから知識としては知っていた。
実際に見るのは初めてだし、ちょっと興奮する。
「さ、さ、触っていみてもいいか?」
「えぇ?」
「や、やっぱり駄目か?」
「別に……いいけど」
シトネは恥ずかしそうに……ではなく、困惑したように頷いた。
その理由に心当たりはあるが、今の俺はあまり気にしていない。
彼女の尻尾と耳に触れたくてソワソワしている。
「じゃ、じゃあ……」
モフモフ、ふわふわ。
おお……なんて気持ちいい肌触りなんだろう。
ちょっと固めだけど、俺にはちょうど良い質感だ。
抱き枕にしたらあっという間に夢の中に行けそうな予感がする。
「ぅ……くすぐったいよぉ」
「あ、あーごめん。ありがとう」
「……リンテンス君って変な人?」
「うっ、違うぞ」
今の行動からして反論になっていないが……
しまったな。
こういう行動力は師匠に似てきてしまったのだろうか。
「急にごめん」
「ううん。リンテンス君は……普通に接してくれるんだね」
「え、あぁ……そういう偏見はないからな」
「ありがとう! ちょっと嬉しかった」
えへへっと言いながら笑うシトネ。
その笑顔は優しくて、淡くて、守ってあげたいと思える笑顔だった。
茶色いフードは俺とぶつかった衝撃でヒラリとあがる。
そこから文字通り顔を出して、黄色の綺麗な髪がサラッと見える。
おでこを押さえている手が邪魔をして、左目は見えないけど青い右目はハッキリ見えていた。
透き通るような白い肌は整っていて、触らなくてもモチモチしている感じが伝わってくる。
スレンダーで胸は小さめ。
一言で表すと、可愛い女の子だ。
いや、そんなことよりも……
耳と尻尾が付いている。
耳と言うのは人間の耳ではないし、尻尾は当然人間にはない。
大昔はあったとか聞いた気がするけど、現代の今はあり得ない。
しかし、目の前の彼女にはどちらもある。
黄色と白のフサフサした耳に尻尾。
形状からして、狐のそれだろうと思う。
俺とぶつけたおでこは赤くなっていた。
相当痛かったのか涙目になっている。
「痛いなぁ……って、え? 人間だったの!?」
「い、いやこっちのセリフなんだが!」
思わず大きな声で反論してしまった。
まさかの発言だったから、ついつい動揺してしまったようだ。
「あ、いやごめんなさい! そういう意味じゃなくて、あんまり硬いから岩か何かにぶつかったのかと思って……まさか人だったなんて」
「あぁ、そういうことか」
少しほっとした。
「ごめんなさい! 急いでてあんまり前を確認してなくて」
「いや良いよ。それより大丈夫?」
「大丈夫です!」
「そう? おでこかなり腫れてるけど」
時間が少し経過して、より腫れが強くなっている。
あからさまにコブが出来ているぞ。
ちなみに俺は大丈夫だ。
強化魔術の使用中だったから、あの程度で怪我はしない。
まっ、強化魔術を使っていた所為で強い衝撃を生んでしまったわけだが……
「平気です! 自分で治癒できますから!」
「治癒?」
彼女は左手を自分の額に近づける。
すると、方陣術式が展開され、淡い光が額に注がれる。
彼女が使っているのは治癒魔術だ。
それも無詠唱だし、魔力の流れも悪くない。
相当訓練されているのがわかる。
治療が終わり、額のコブが綺麗に消えた。
ニコッと笑う彼女に、俺から質問する。
「えっと、君も魔術師なの?」
「はい! そういうあなたも?」
「ああ。俺はリンテンス」
「私はシトネ!」
シトネ、変わった名前だな。
王都の出身ではなさそうだけど。
「シトネは何でここに?」
「えーっと、実は私、魔術学校の入学試験を受けに来たの」
「そうなのか。じゃあ俺と同じだな」
「え、リンテンス君も? じゃあ同い年なんだ」
「ああ」
どう見えていたんだか。
「試験に向う途中だったとして、何でこんな森に?」
「それはね、私の村が王都の外にあって、ここを通るのが一番近道だったからだよ。でもちょっと寝坊しちゃって……」
「それで慌てて走ってたわけか」
「うん。リンテンス君は?」
「俺は試験前に身体を動かしとこうと思って」
「そうなんだ」
シトネとの話が進んでいく。
彼女がこの森にきた理由とか、目的はわかった。
って違う!
そこも気になっていたけど、一番知りたいのはそこじゃない。
もっとこう……見た目的な意味だ。
「あのさ……その耳と尻尾って……本物?」
「え? うん、本物だよ」
本物か。
ということは、やっぱり彼女は――
「先祖返りなのか」
「うん」
先祖返り。
今から数千年以上昔には、人間以外にもたくさんの種族が存在したらしい。
そのうちの一つに獣人種と言う、獣と人間が混ざり合ったような種族がいた。
現代ではいなくなってしまった種族だけど、遺伝子は俺たちの中に残っていて、時折その遺伝の影響から、先祖の姿が身体に現れることがある。
彼女の場合は見た目通り、狐の獣人を先祖に持っているのだろう。
文献で見たり、話には聞いていたから知識としては知っていた。
実際に見るのは初めてだし、ちょっと興奮する。
「さ、さ、触っていみてもいいか?」
「えぇ?」
「や、やっぱり駄目か?」
「別に……いいけど」
シトネは恥ずかしそうに……ではなく、困惑したように頷いた。
その理由に心当たりはあるが、今の俺はあまり気にしていない。
彼女の尻尾と耳に触れたくてソワソワしている。
「じゃ、じゃあ……」
モフモフ、ふわふわ。
おお……なんて気持ちいい肌触りなんだろう。
ちょっと固めだけど、俺にはちょうど良い質感だ。
抱き枕にしたらあっという間に夢の中に行けそうな予感がする。
「ぅ……くすぐったいよぉ」
「あ、あーごめん。ありがとう」
「……リンテンス君って変な人?」
「うっ、違うぞ」
今の行動からして反論になっていないが……
しまったな。
こういう行動力は師匠に似てきてしまったのだろうか。
「急にごめん」
「ううん。リンテンス君は……普通に接してくれるんだね」
「え、あぁ……そういう偏見はないからな」
「ありがとう! ちょっと嬉しかった」
えへへっと言いながら笑うシトネ。
その笑顔は優しくて、淡くて、守ってあげたいと思える笑顔だった。