
作品番号 1670900
最終更新 2022/07/20
彼女は俺の目を塞いだ。
「怖いなら、見なければいいんだよ」
真昼の夜闇は暖かかった。
そして優しく、いたずらに囁く。
「世の中にはね、本当のことなんてないんだよ」
今までが嘘でもいい。
今までの幸福と引き換えに、今を嘘にしてほしい。
本当のことなんて欲しくない。
本当のことなんて、ただ、世界を包む嘘だけでいい。
大輪の赤い花が小さな花に変わった。
ずっと枯れずに咲いていた赤い花。
どこかで鳥が鳴く。
もしもこれが嘘ならば、
ここはなんて悲しい場所だろう。