第7回スターツ出版文庫大賞 大賞受賞作品
きみが僕のすべてを変えたんだ
『夏の終わり、透明な君と恋をした』
[原題] 例えこの世界が君を拒絶したとしても、君と過ごしたあの夏は忘れない。
九条 蓮 /著
イラストレーター:堀泉インコ
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【総評】
この度は「第10回スターツ出版文庫大賞」へ多数のご応募を頂きありがとうございました。
今回は、「同性同士の青春」部門を新設しましたが、新設した理由として、男女恋愛に対する10代読者の憧れや興味が以前と変化した背景があります。ストーリーの軸となる恋愛要素を使えない中で、設定やメッセージ性を創作するのに作者の方は苦労されたのではないでしょうか。
しかし、結果的にはほかの部門も含め、ジャンルに捉われない、恋愛以外での繋がりや絆を描く作品など多様な作品が集まりました。大賞作品は、新設した『未来屋書店賞』とのダブル受賞となり、スタ文の新しい方向性を示唆するような、仕掛けの効いた連作短編作品です。
スタ文のジャンルの幅が広がるような希望を秘めた作品と多く出会える審査となりました。誠にありがとうございました。各受賞作品への講評は以下の通りとなります。
大賞
『溶けて一つになったその先で』湯浅八等星/著
【講評】
五編を収録した“インスタント伏線回収”短編集。と本作あらすじにはそうあります。そのあらすじの通り、まず何より仕掛けが秀逸でした。各短編のみで山場とどんでん返しがあるのはもちろん、連作短編として5つの短編が相互的にリンクしており、物語が一本の大きな軸で繋がったときには、とても驚きました。確かに“インスタント伏線回収”短編集でもありながら、その各短編が大きな物語を形成している構成にもとても楽しまされました。
また本作では、各短編、そして物語全体の仕掛けに、読むことは”解釈”であることが上手く利用されています。物語も、言語も、受け取り手の解釈によって成立するものですが、この解釈には幅があり、書き手の意図、作中の真実と相反する理解をなされる場合もあります。本作はその解釈の幅を活用した仕掛けが施されています。
そしてまた、これこそ解釈に過ぎませんが、そこに物語のテーマ性さえも感じました。作中にある、「あったかもしれない全ての可能性を全部本当だと思えばいい」というセリフ。これもまた解釈によるものです。世界は変えられなくても、解釈は変えることができる。それによって少しでも前を向けることは、とても素敵なことだなと思いました。
卓越したエンターテイメント性と、一貫して感じられるテーマ性が光る作品でした。とても面白かったです!
(スターツ出版文庫編集部)
型破りヒロインの和風ファンタジー部門大賞
『バツ印令嬢の癒し婚』澤谷弥/著
【講評】
離婚歴3回、能力は“家族限定”の落ちこぼれ令嬢が、ある秘密を抱えた公爵と契約結婚する。
期限つきの夫婦関係で、自分の運命に立ち向かっていく――。
「離婚歴3回の公爵令嬢」というインパクトのある設定を軸に、王道人気要素を掛け合わせた、素晴らしい作品でした!冒頭にある “バツ印令嬢”という肩書きは読者を引き込み、なぜその立場に追い込まれているのか、どんな運命を背負っているのかを自然と知りたくさせる強いフックになっていました。ヒロインの「治癒は家族にしか使えない」という制約は、物語の展開に直結する設定で素晴らしかったです。その矛盾を逆手に取った「呪いを受けた男性に結婚を迫る」という展開には説得力があり、とてもワクワクしてしまいました。特に、結婚に至るまでの流れは設定を活かしてテンポよく描かれていて、物語に一気に引き込む力がありました。ヒロインは、能なしと蔑まれながらも地頭がよく聡明で、自ら考え行動できる芯の強さを持った魅力的なキャラクターでした。契約結婚という枠組みの中でも、二人が上下ではなく「対等な関係」として描かれている点も好印象です。
改めまして、素敵な作品をありがとうございました!
(スターツ出版文庫編集部)
悪役 × 和風シンデレラファンタジー部門大賞
『無能とされた花巫女は、夜叉のもとで花を咲かせる【改稿版】』鈴木しぐれ/著
【講評】
花巫女の家系に生まれながら、無能と虐げられているヒロインが、都を守る最強の護り人と出会い、運命が動き出す――。
物の怪から都を守護する護り人と、護り人が使う刀や弓矢に力を宿す花巫女という両者が協力するが故に力が発動するという設定が素晴らしく、ヒロイン&ヒーローが協力していく姿が見られ、読みながら応援したくなる作品です。なによりヒロインをはじめ花巫女が舞うと光を放つ花が舞うシーンは、想像力を掻き立てられ、とても美しい情景が浮かび、臨場感あふれる描写に引き込まれました。また、ヒロインが妹をはじめとした登場人物に無能と蔑まれ、虐げられていながらも屈せずに活躍する姿は力強く、とても魅力的なヒロインです。
書籍化に向けてブラッシュアップして、ふたりが恋になっていく姿をさらに見ることができたら嬉しいです。
素敵な作品をありがとうございました!
(スターツ出版文庫編集部)
noicomi賞
『無能とされた花巫女は、夜叉のもとで花を咲かせる【改稿版】』鈴木しぐれ/著
【講評】
ヒロイン像の新しさと、漫画向きの設定が評価されてのnoicomi賞受賞となりました。
虐げられながらも、『花巫女』として舞を舞うことを諦めないヒロインがとても好印象でした。ヒロインが不遇な状況から始まる設定が多い故に、どうしてもヒロインが塞ぎ込みがちな和風ファンタジー作品の中で、本作はただ落ち込むだけではなく自分の『好き』を確立しながら前を向こうとしているのが素晴らしいです。
また、舞を舞うと花びらも一緒に舞う設定や舞踏会での洋装シーンは、コミカライズをした際に画面が華やかになるため、漫画編集部としてはとてもありがたい設定でした。
王道の和風ファンタジーの設定にオリジナリティをうまく溶け込ませた素敵な作品だと思います。ぜひ、前向きにコミカライズを検討させていただければと思います。
(noicomi編集部)
未来屋書店賞
『溶けて一つになったその先で』湯浅八等星/著
【講評】
(未来屋書店)
特別賞
『夏霞の向こうへ』秋月未希/著
【講評】
出来の良い弟と比べられ劣等感を抱いていた高校二年生の俊。ある日、学校をサボっていると高架下で和馬と出会う。同じような境遇を語り合ううちに、二人は友情を深めていったのだが、和馬にはある秘密があって――。
「この1冊が、わたしを変える。」をテーマに等身大の人物に共感ができ、物語を通して感じる成長要素に自分を重ね、希望を見出せるような作品を刊行してきたこれまでのスターツ出版文庫にふさわしい作品だったと思います。「マイノリティ」「葛藤」「自分らしく生きる」「青春」…と、欲しい要素が詰まっていたと思います。兄弟と比べられている悩み、自分のマイノリティへの悩み。今の時代にストレートに突き刺さると思います。その意味でアンチブルーの要素は感じました。
ただ、ジャンルとしてどう括っていくが課題になるかと思います。物語を通しての展開の盛り上がり、希望などは感じますが、ブロマンスの要素も同じく大きく感じ、このジャンルならではの重く暗い雰囲気は全体的にあったと思います。重く苦しい話がスターツ出版文庫(アンチブルーも含め)はじめ10代の読者市場が求める数としては少ない現状がある中で、いかに物語の全体感のテンションを上げていくかが課題かなと思いました。
俊と和馬のふたりだけに流れる独特な雰囲気と世界観は、この作品にしかなく、素晴らしかったと思います。面白かったです! 前述した内容を意識し、改稿して書籍化を目指したいと思える素敵な作品でした。ありがとうございました!
(スターツ出版文庫編集部)
特別賞
『月の神の花嫁~魂の半身に狂おしく求められて』秋ユリカ/著
【講評】
「月欠け」と呼ばれ虐げられるヒロインとそのヒロインを求める「月詠み」の最強ヒーローの関係性がロマンチックに描かれていました。互いの補完関係による唯一無二の繋がりや運命感を描き、読者の求める王道な展開をしっかり逃さず丁寧に取り入れている印象を得ました。
冒頭で引き込む掴みもうまく、トレンドである悪役のキャラ立ちもしっかり意識されており、書籍化のイメージがいちばん湧いた作品です。自身の描きたいことと、読者が読みたいもののバランスを守りながらオリジナリティを出されている点も、作家さんとして将来性を感じました。ふたりの関係を表現した「月」の美しい世界観とともに、多くの読者に届けたい作品です。
(スターツ出版文庫編集部)
【青春小説】青春恋愛部門大賞
【青春小説】アンチ青春部門大賞
【青春小説】同性同士の青春部門大賞
フリーテーマ部門大賞
⇒ 該当なし
映画が大ヒットを記録した『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』や、2025年6月公開の『青春ゲシュタルト崩壊』など、映像化作品がスターツ出版文庫から続々刊行!コミックを含む累計500万部突破の『鬼の花嫁』などの大人気シリーズも『スターツ出版文庫byノベマ!』から誕生しています。
本コンテストではスターツ出版文庫のコンセプトに合った、10代向け「青春小説」、大人向け「和風ファンタジー」、新たなジャンル・作品との出会いを目指す「フリーテーマ」の作品を募集。従来の作品を覆すパワーある作品をお待ちしています。
スターツ出版文庫は、2015年に創刊したライト文芸・キャラ文芸のレーベル。【この1冊が、わたしを変える。】をブランドコンセプトに、男女問わず、学生から大人までより幅広い年齢の方々が面白く読めて、大切なことが見つかる、そんな“心の成長”を与えてくれる小説をお届けしています。
株式会社未来屋書店は、「イオン」の書籍専門店です。イオンを中心とした全国の大型ショッピングセンターに200店舗以上を展開、特に児童書ジャンルは日本最大級の展開を誇る書店グループです。今回のコンテストの特別パートナーとして、未来屋書店賞をご提供いただき、コンテスト受賞作は特別な展開を予定しています。
未来屋書店賞 《新設》
書籍化未経験の新人作家さんを対象に選出。未来屋書店が未来の才能を応援します!
受賞作はスターツ出版にて書籍化し、未来屋書店各店舗でのPR展開が確約されます。
今年は毎年募集をしている「青春恋愛」に加え、これまでのスターツ出版文庫の枠組みを超えた新たなジャンルとして昨年から募集している「アンチ青春」、そして今年から恋愛要素のない「同性同士による青春」作品を募集します。より読者に近いレーベルでありたいという思いから、青春小説部門として部門を細分化し幅広く作品を募集することとなりました。
◆主人公の年齢:~大学生(①②③共通)
①【青春小説】青春恋愛
心の葛藤と成長が描かれた、青春恋愛小説を募集します。等身大の悩みや葛藤を持った登場人物が、非日常的なイベントに遭遇して、変化していく様子を描いてください。読者が共感できる悩み、興味を引くファンタジックな設定を盛り込んでください。特殊な舞台設定や仕掛けなどで、感動・涙できるような新しい青春恋愛作品をお待ちしております。
②【青春小説】アンチ青春
スターツ出版文庫アンチブルーにて発刊する作品を募集します。他人に見せたくないような自分、綺麗じゃない自分、いわゆる普通じゃない自分。そんな一面を抱えた主人公が良くも悪くも強さも弱さも含めた本当の自分で、だからこそ本気で誰かと関わり合い、そして変わっていく物語を楽しみにしています。特に、通常見せられないはずの弱みを、主人公がオープンにせざるを得ないような状況や設定。そんな状況で関わるからこそ、逆説的に強く感じられる人との強い繋がり。そして、冒頭から読者を惹きつけ、読み進めさせるエンターテイメント性、などを持つ作品を強く歓迎いたします。
③【青春小説】同性同士の青春
恋愛要素のない“同性同士”の「青春作品」を募集します。主人公が、新しい出会いや、自分とは正反対の人間に出会い感化され、また同時に正反対だった人間も成長していき、共に一つの目標(部活やサークル活動、その他の夢など)に向かって切磋琢磨していく様子を描いてください。また、1対1の関係ではない4人組(人数は問いません)などのグループを描く物語も積極的に募集します。どの登場人物もキャラクターとして特徴があり(キャラが立っている)、さらにそれがお互いに高め合うような要素になるとなお良いです。
④悪役 × 和風シンデレラファンタジー
◆ヒロインの年齢:10代
あやかしや異能を持つ最強ヒーローに愛され、秘めた能力が開花し互いに補完し合う関係性が描かれた和風シンデレラストーリー×ヒロインを虐げる悪役を印象的に際立たせた作品を募集します。王道の姉妹格差に加え、義母や元婚約者など複数の強烈な悪役たちの登場を望みます。ざまぁ展開が楽しみになるような悪役達をお待ちしております。
⑤型破りヒロインの和風ファンタジー
転生や、悪女設定、最強の異能など、特色を持つヒロインが、ヒロイン自身の活躍によって成り上がっていく和風ファンタジーを募集します。あやかしや異能を持つヒーローとの恋愛要素を含んだ、ざまぁ感、異世界ファンタジー設定を取り入れた、ヒロインのキャラクターが際立つストーリーを期待しています。
⑥フリーテーマ
上記5部門には該当しないジャンルを募集します。 たとえば、日常の延長線上にあるようなホラーモキュメンタリー作品や、タイパ良く読めるどんでん返しの効いた連作短編など、ジャンルに囚われない新しい作品をお待ちしております。
第10回の部門・テーマについて、詳しくは「スタ文編集部座談会」をご覧ください!
各部門の詳細や前年からの変更点について、スタ文編集部が解説する「座談会」を実施。
| 賞 | 大賞(1作) スターツ出版から書籍化確約&コミカライズ検討+賞金30万円 部門大賞(各部門1作) スターツ出版から書籍化&コミカライズ検討+賞金5万円 noicomi賞(作品数未定) noicomiでコミカライズ検討+賞金5万円 未来屋書店賞(1作) 書籍化未経験の新人作家さん*を対象に選出。未来屋書店が未来の才能を応援します! スターツ出版から書籍化確約+未来屋書店各店舗でのPR展開確約 *:紙・電子を問わず、単独長編の商業書籍化実績がない方が選考対象となります。
(2025.6.12追記) |
|---|---|
| 応募方法 | 事前にノベマに会員登録の上、作品を投稿してください。 STEP1 エントリーしたい作品の【作品編集】から、【設定】画面のコンテスト応募、第10回スターツ出版文庫大賞を選択します。 STEP2 エントリーする部門を選択し、あらすじを入力してください。
※以下は参考イメージです。 STEP3 ページ最下部の【設定を保存する】ボタンを押すとエントリー完了です。 |
| 作品文字数 | 「ノベマ!」上で、文字数8万字以上13万字以内に収めてください。 (1ページの最大入力可能文字数は10万字です。) |
| スケジュール |
応募作多数のため、審査期間を延長させていただきました。(2025.10.21) ※スケジュールは変更になる可能性があります。 |
| 応募資格 | 不問(プロ、アマ、年齢等一切問いません) 但し、専属マネジメント契約等を交わしている場合は、担当会社様への事前のご確認をお願いいたします。 |
| 対象 | 小説投稿サイト「ノベマ!」に投稿された作品。 「スターツ出版文庫」のコンセプトに準じた作品であれば、複数エントリーしていただけます。 以下に該当する作品のエントリーは不可となります。
|
| 審査について | 審査員 スターツ出版 書籍編集部 審査方法 すべての作品を読んだ上で、総合的観点から審査いたします。 |
| 注意事項 |
※コンテスト応募作品に当社以外の商業打診があった場合は、選考が進んでいる場合がありますので、受ける前に必ず運営局までご連絡ください。 |
| 個人情報について | 応募および受賞に際し提供いただいた個人情報は、スターツ出版株式会社のプライバシーポリシーの定めるところにより取り扱わせていただきます。 |
| 諸権利 | 受賞作品の出版権、雑誌掲載権、インターネット上への掲載権、コミカライズ権、映像化権等はスターツ出版株式会社に帰属します。受賞作品の全部または一部を、スターツ出版が発行・運営する紙面、インターネット、スマートフォン向けサイトに掲載することがあります。 |
| お問い合わせ | 投稿やエントリー方法など、本コンテスト関するお問い合わせはtoi@novema.jpまでお願いします。 ※選考に関するお問い合わせ・ご質問には応じかねます。 ※携帯メールからの問い合わせの際、迷惑メール対策をされている方は受信対象ドメインに@novema.jpを指定してください。 |
2023年4月28日発売
きみが僕のすべてを変えたんだ
『夏の終わり、透明な君と恋をした』
[原題] 例えこの世界が君を拒絶したとしても、君と過ごしたあの夏は忘れない。
九条 蓮 /著
イラストレーター:堀泉インコ
2023年3月28日発売
2024年4月28日発売
余命一年、私と一生分の恋をしませんか――。
『余命一年、向日葵みたいな君と恋をした』
[原題] 来年の夢をみれば、心も笑う。
長久 /著
イラストレーター:Sakura
2025年1月28日発売
何度生まれ変わっても君を愛してる
『偽りの花嫁~虐げられた無能な姉が愛を知るまで~』
[原題]今宵、この口づけで貴方様を――
中小路かほ /著
イラストレーター:神無月なな
2025年5月28日発売
2025年4月28日発売
有能な姉に比べられた妹は、最強の軍神のもと愛を知る――。
『双子の姉にすべて奪われた私が、軍神に愛されています』
[原題] 純血の貴人は只人の乙女を慈しむ
小原燈 /著
イラストレーター:ちょめ仔
2025年7月28日発売
2025年8月28日発売
生まれながらの欠陥品
『妹の身代わり妾となるはずが、呪い子は幸せな神嫁になりました』
[原題] 戸惑いの神嫁と花舞う約束 呪い子の幸せな嫁入り
響 蒼華 /著
イラストレーター:北沢きょう