- 作品番号
- 1635548
- 最終更新
- 2021/07/17
- 総文字数
- 119,159
- ページ数
- 77ページ
- ステータス
- 完結
- いいね数
- 3
- ランクイン履歴
-
総合82位(2021/06/30)
青春・恋愛48位(2021/06/30)
お好み焼き屋「えびすや」
インターネットで検索すれば、必ず1ページ目に表示される有名店だ。
たたみ一畳分以上の巨大な鉄板で焼かれるお好み焼きは絶品で、市内はもとより近隣の市町村、ときには県外から訪れる者もいる。
まるでクレープのように、そばやキャベツ、生地等が層を作り、その上にたっぷりとかけられた甘辛いソースの香りが、鼻こうをくすぐる。
常連客は箸では食べない。手の平に納まるサイズのヘラで切り分け、ハフハフと湯気を立てながら口に運ぶ。至福の瞬間だ。
「えびすや」には魔女がいる―――一部では、特に女性の間では有名な都市伝説。
手にしていた金属製の大きなヘラを置き、曲った腰を自ら叩きながら顔を上げる。そして、弓なりの優しげな目を客に向け、店主は穏やかな口調で話し掛けた。
「じゃあ、ちょっとだけ見てみようかね」
お好み焼きを食べ終えた客が、ヘラを置いた手を差し出す。その表情は期待に満ちている。
来店客に対してのみ、サービスとして行われる手相占い。
的中率はほぼ100パーセント。
何も話さなくても、ビシバシと悩み事を言い当てる。
そして、年輪を刻んだ笑顔で的確なアドバイスをする。
このサービスが口コミで広がり、さらに「えびすや」の名を有名にした。
- あらすじ
- お好み焼「えびすや」
手相占いが得意で魔女とまで呼ばれた店主が他界し、次の世代へと移行した。
一般客も来店するが、未だに占いを目当てに訪れる客も多い。その人たちは、何かしらの悩みを抱え、救いを求めて足を運んでいる。
店主が他界したことを知り、落胆して店を後にする人たち。その後姿を見送りながら、孫である凛花は思い悩んでいた。
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