夢の中で、また君に会えるから

作品番号 1596734
最終更新 2020/06/04

夢の中で、また君に会えるから
恋愛・青春

113ページ

総文字数/ 91,998

不思議な夢を見たことがある。
姿は小学生に戻っていて、周囲の人間は姿を消しており、時間という概念がそこには存在していなかった。

そんな中で僕は謎の少女、木村ユリナと出会う。
無邪気に笑う可愛らしい女の子、人懐っこい彼女は僕の後をついてくる。

二人だけしかいない閑散とした世界、その中で彼女と日が暮れるまで遊び回った。

謎の手紙をきっかけに、僕は彼女の正体を次第に突き止めていく。
全てを知った時、僕達に残された時間はほんの僅かだった。
あらすじ
主人公の香山リョウは唯一愛した女性、木村ユリナに振られたことがきっかけで自暴自棄に陥っていた。
 アパートの自室に引き籠り、昼夜逆転した生活で毎日大量のアルコールと煙草を立て続けに摂取していた。
 そんなある日、リョウは煙草を切らし、買い足す為に雨の激しく降る深夜の路地を傘も差さずに歩いていた。
 そこでかつての恋人、木村ユリナと再会する。
 ユリナは彼に抱き着き、甘える様に身を捩らせてくる。
 リョウは急な出来事に狼狽したが、次第に意識を失い目覚めた時には自室のソファの上で目覚めていた。
 何だ、夢かと思い、顔を洗おうと洗面台の鏡の前に立つと彼の姿は小学生のものに戻っていた。
 リョウは混乱し、外に飛び出ると辺りには誰一人として人がおらず、どこまで進んでも他の人と出会う事は無かった。
 近所の公園へ向かうと、リョウと同様に小学生の姿に戻った木村ユリナがブランコに乗り空を仰いでいた。
 リョウとユリナはそこで再会を果たすが、互いに関する記憶を失っており初めて出会った様な反応になる。
 ユリナは元気溌剌な少女で、物静かなリョウは彼女の下に敷かれいろんな場所にことごとく連れ回されていく。
 二人しかいない閑散とした世界、その中で彼らは自転車を盗み、車の走らない道路の真ん中を堂々と二人乗りで進み、ショッピングモールやゲームセンター、楽器店などを巡っていく。
 展望台を訪れ街の情景を眺めているとき、何かは思い出せないけどこの場所を知っているとユリナは言う。
 元の世界に関するわずかな記憶が、彼女の中に残っていたのだろうとリョウは思う。
 自室に戻ると、ユリナに散らかった部屋を強制的に掃除させられお酒や煙草類は全て捨てられてしまう。
 リョウはアパートの裏側に回り、水道メーターのボックスを開ける。その中には彼女にバレないよう煙草とライターを潜ませておいたのだ。
 メーターボックスの中には見覚えのない一通の手紙が入っており、開くとユリナに関する情報や彼女の住んでいた家の住所などが記載されていた。
 差出人不明の手紙がきっかけで彼はユリナの部屋を訪れ、そこで元の世界で僕達が恋人関係だったこと、既に別れてしまっていた事、彼女が重い病気にかかっていたことを知る。
 元の世界のユリナは自分が死んだ後、優しい彼は次の恋人を作ることに躊躇してしまうかもしれない。
 幸せの足枷になりたくないと思い、彼と別れ姿を消したのだ。
 思い出せない記憶、夢の中で再会したかつての彼女、ユリナの隠していた本当の真実。
 彼は心の中で葛藤し、少女姿のユリナと衝突しながらも徐々に不思議な夢の真相へと近づいていく。
 その後新たな手紙が送られてきて、差出人は場所を指定しリョウを待っているという旨が綴られていた。
 場所は病院で、指定された病室に向かうと壁のプレートには木村ユリナと書かれていた。
 中に入ると大人になったリョウの姿があった。
 もう一人のリョウは十年後の自分だと名乗った。
 そこでユリナの命はもう長くないこと、今の状況は全て夢の中で起こっていること、自分も十年前に同じ夢を見たことがあり、当時はその夢の意味を理解できなかったと言う。
 未来の僕は、夢から覚めた後変わらず自堕落な生活を送り、こうなってしまったのは全てユリナのせいだと恨み続けていた。
 彼女が既に亡くなっていたことを知ったのは、つい最近のことだった。そこであの夢はお告げの様なものだったのかもしれないと思い、何もできなかった自分に深く後悔していた。
 だからその事を過去の自分に伝えるために、未来からリョウに会いに来たのだと言う。
 僕は最後に彼女と会うことができなかった。
 でも君はまだ間に合う、夢から覚めた後、どうすればいいのかもう分かるはずだ。
 未来の自分の言葉を聞いて、リョウは夢から覚めた後ユリナの元へ一目散に走りだした。
 再会したとき、彼女の足はもう動かなくなっていた。
 車椅子を押しながら、夢で来た展望台へ彼女と向かう。
 ここはリョウとユリナが恋人になるきっかけになった特別な場所だった。
 彼らは最後の時間を一緒に過ごし、その後ユリナは命を引き取った。
 彼女の笑顔を最後に見られてよかったとリョウは思う。
 その後、リョウはまた不思議な夢を見る。
 誰もいない閑散とした世界、その中で互いに小学生の姿で再会を果たす。
 元の世界にもう君はいない。
 でも、夢の中でまた会えるから。
 そう信じて疑わなかった。
 無邪気で屈託のない笑みを浮かべる少女を見て、リョウもまた笑い返した。

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