水道メーターを開けると三通目の手紙が入っていた。
これが最後の手紙になるかもしれない、長方形の白い封筒を手に取った時そう感じた。
中身を取り出し、三つ折りにされた紙を開いてそこに書かれた文面に目を通す。
〈木村ユリナが元の世界でどんな状況下にあったのか、君はもう薄々気づいている事だろう。だからこれが最後の手紙になる。
この場所に来てくれ、そこで全てを君に託そう〉
数行の空白があり、一番下の行に数キロ先にある国立病院と東病棟三〇一号室と書かれていた。
手紙の差出人はそこで待っている、いよいよ対面する時がやってきたのだ。
全てを託そうとはいったいどういう意味なのだろうか、ユリナに関する事には間違いなさそうだが。
この人は僕とユリナについて知っていた、僕達の関係性をこの世界で誰よりも把握している人物だ。
残された記憶の中で探ってみるが、誰一人として見当もつかなかった。
疑問点は他にもある、何故この人は手紙という回りくどい手段を使ったのか。
姿をさらさず、恐らく遠くから観察し、僕がユリナに関する記憶を思い出させる為にヒントとなる言葉を手紙に綴り送る。
あまりにも手間がかかり効率が悪いように思える。
僕が手紙に書かれたこと通りに動くとは限らないというのに。直接会って話すのではダメだったのだろうか。
手紙の差出人は、僕とユリナに会えない理由でもあるのか。
こればっかりは直接聞いてみないと分からないか。
僕は部屋にいるユリナにちょっとコンビニに行ってくると一言掛け、「えー私も!」とついてきそうだったので急いで自転車に跨り病院へと向かった。
帰ったらまた拗ねられているだろうな。