仕事から帰り玄関のポスト受けを見ると一通の封筒が入っていた。
香山リョウ様と書かれた宛名を確認し、封を切ると中身は同窓会の案内状だった。
また来たか、と心の中でうんざりとする。
これを見て懐かしいなという心持にはなれないし、彼らと再会し語る様な思い出もなければ卒業後の動向が気になるという事もない。
案内状の入った封筒をローテーブルの机の上に放り投げ、彼女の残した日記帳の上に被さる形になる。
彼女が持っていてほしいと、僕に託してくれたのだ。
僕はスーツから上下スウェットの寝巻に着替えて直ぐに寝床に着く。
新しいアパートに引っ越してから八年は経とうとしているが、清潔感が保たれた部屋の中で充実した睡眠を得ることができた。
お酒と煙草をきっぱりとやめたことが大きな転換になったのだろう。
明日は休日だから昼まで寝てやろう、そう思っていたのだが、朝になれば携帯電話のけたたましい着信音に叩き起こされ、その計画は呆気なく失敗に終わった。
同窓会、絶対来いよな!もう顔も思い出すことのできない元同級生からの電話だった。
めんどくさい、興味が無いから行きたくない、当然その旨を伝える度胸が僕にはあるはずもなく誰もが仕方がないと納得するような理由を持ち合わせていない僕は渋々同窓会に参加することになった。