「これもゴミ!これもゴミ!もう、切りがない!どれだけ汚いのよ!」
 再びユリナは声を荒げていた。
 彼女は部屋中に散らばるゴミらしきものを片っ端から手に掴み傍に置かれた袋に詰め込んでいく。
 既に一つのゴミ袋はもう何も入らない位パンパンになり、新しく出した袋もまた上限に達そうとしていた。
 彼女がリビングとキッチンを掃除している間僕も同じように和室のゴミをかき集め袋に詰めていた。
 どうしてこうなったのか、必然といえば必然なのだが、望んだ展開ではなかった。
 缶ビール、煙草、カップラーメンの空き箱が多く占め、その他は衣服や細々としたお菓子のゴミやプラスチックのトレイなどが床やテーブルに幅広く展開されていた。
 我ながらよくここまで部屋を汚せたものだ。
 彼女が最初部屋に足を踏み入れた時、空き巣に入られたのではないかと本気で心配してきたくらいだ。
 当時は片付ける気なんて更々なかったから、汚すことに一切の躊躇いを感じなかった。
 だがいざ掃除するとなると正直めげそうになる程酷い有様だった。
「ほらっ!ボーとしてないで手を動かす!」
 彼女は定期的に僕の方を振り向いてちゃんと掃除をしているか厳しい視線を向けてくる。
 やれやれ、第一ここは僕の部屋なんだからどう使おうと僕の勝手だろう!と反論したいところだが、そうすればまた泣かせてしまうかもしれない。
 さすがの僕も子供相手にそこまで心を鬼にすることはできなかった。
 異臭の発生源ともいえる吸殻が溜まった灰皿の中身を袋の中に流し込む。
 彼女がここに来てしまったのはもちろん僕から誘ったわけではなく勝手についてきたのだ。
 もちろん僕は断った。しかし意固地な彼女がそこで引き下がるわけもなかった。