不思議な夢を見たことがある。
何から何までおかしくて、思い出すのはいつだってあの少女の愛らしい表情だ。
人間は見た夢の九十パーセントを五分以内に失ってしまうらしいが、その夢だけは昨日の事の様にはっきりと思い出すことができた。
今更思い返してしまったのは、あの夢を見てから約十年後、久しぶりに帰郷した事がきっかけだった。
そこで、あの出来事が何を意味していたのかを後に知ることになる。
知った時にはすでに手遅れで、後悔の念を抱き途方に暮れるほかなかった。
どうしてあの時気づいてあげられなかったのだろう。
きっと彼女は、誰よりも助けを求めていたはずなのに。
墓石の前に立ち呆然と立ち尽くす。
そこにもう彼女はいない。
残骸の一部が納められているに過ぎないことは知っている。
この世界で二度と彼女と再会することは叶わない、墓石とはその人との記憶を忘れないよう繋ぎとめるためのシルシにすぎないのだから。
今更後悔しても、もうどうしようもない問題だ。
でももし、この想いが届くのなら。
彼女がまだ、あの世界にいるのなら。
もう一度僕は、夢の中にいる彼女に会いたいと思った。