不思議な夢を見たことがある。
他の人が誰もいなくて、時間は止まっていて、姿は小学生に逆戻りしている。
現実と見間違えてしまう程のリアリティがそこにはあって、先程述べた相違点がなければこれが夢の中だと疑うことは永遠になかったのかもしれない。
路地を歩いていると公園が見えてきて、そこからキーキーと錆びれた金属音が鳴り響いてきた。
音の正体は一目瞭然だった。
経年劣化の激しいブランコに乗り、退屈そうに空を仰ぎながら漕ぐ小学四、五年生位の少女がいたからだ。
僕は公園内に入り、少しずつ少女の元へ近づいていく。
しばらく少女は気づかなかったが、僕の姿を見るとブランコから瞬時に飛び降りて全速力でこちらの方へと駆けてきた。
「リョウ君!」
懐かしい叫び声が響き渡る。
少女はあっという間に目の前まで接近してきて、スピードを緩めることなく僕の胸の中へ飛び込んできた。
当然小さな体になった僕はその衝撃を受け止めきれるはずもなく地面の方へ崩れ落ちる。
胸の中に顔を埋めたまま少女はクスクスと笑い始め、ゆっくりと顔を上げる。
屈託なく笑う、無邪気で可愛らしい笑顔。
やっぱり好きだな。君のその笑顔が、愛おしくて堪らない。
僕は少女の小さな頭を丁寧に撫で、少女は心地よさそうに目を細める。
僕と君しかいない閑散とした世界、またこの場所で再会することができた。
そこで僕達は陽が暮れるまで遊び倒して、夜になりベッドで眠って起きると元の世界に戻っていた。
当然少女はいなくなっていたけど、不思議と寂しくはなかった。
また、必ず会えるから。
そう信じて疑わなかった。
僕達が互いを愛し続けている限り、この夢は永遠に続いていくのだから。