
- 作品番号
- 1783291
- 最終更新
- 2026/06/19
- 総文字数
- 61,651
- ページ数
- 25ページ
- ステータス
- 未完結
- いいね数
- 2
- ランクイン履歴
-
青春・恋愛20位(2026/06/13)
恋愛10位(2026/06/13)
暖炉はある。火の気はないけれど。
没落した一条伯爵家で、澄乃はひとり針を動かしていた。亡き母から受け継いだ刺繍の腕だけが、身体の不自由な父と、古い屋敷と、年老いた女中を支えている。
薄暗い部屋で絹地に向かい、ひと針ごとに祈るように繍う。美しいものを生み出す手が、いつしか美しさを味わう余裕を失っていた。
そんな年の瀬の夕暮れ。
門の前に止まった黒塗りの自動車から降り立ったのは、若き陸軍少佐・橘朔也。
父の借財を肩代わりし、婿としてこの家に入ると告げた男は、書斎で向かい合った澄乃を無言で見つめた。
値踏みでも、好奇心でもない。
まるで、ずっと前から知っている誰かを確かめるかのようなまなざしで。
なぜ、この人はそんな目で自分を見るのだろう。
とまどいを抱えたまま、澄乃は朔也との仮初めの婚姻を受け入れる。
夫婦になっても、二人の距離はぎこちない。
それでも朔也は、冷静で隙のない軍人の顔を崩さないまま、一条家の暮らしを少しずつ整えていく。
冷え切った部屋に暖を入れ、灯りを整え、父の薬を手配する。
そして澄乃の刺繍を、けっして単なる「趣味」と見なさない。
ただ、それだけのことなのに。
何故か、凍えていた心が少しずつほぐれ始める。
何気ない暮らしの中で、ゆっくりと恋が育ってゆく。
気丈な没落令嬢と、怜悧で甘い押しかけ婿の、じれ恋・大正浪漫。
※表紙イラストはAI生成のイメージ画像です。
没落した一条伯爵家で、澄乃はひとり針を動かしていた。亡き母から受け継いだ刺繍の腕だけが、身体の不自由な父と、古い屋敷と、年老いた女中を支えている。
薄暗い部屋で絹地に向かい、ひと針ごとに祈るように繍う。美しいものを生み出す手が、いつしか美しさを味わう余裕を失っていた。
そんな年の瀬の夕暮れ。
門の前に止まった黒塗りの自動車から降り立ったのは、若き陸軍少佐・橘朔也。
父の借財を肩代わりし、婿としてこの家に入ると告げた男は、書斎で向かい合った澄乃を無言で見つめた。
値踏みでも、好奇心でもない。
まるで、ずっと前から知っている誰かを確かめるかのようなまなざしで。
なぜ、この人はそんな目で自分を見るのだろう。
とまどいを抱えたまま、澄乃は朔也との仮初めの婚姻を受け入れる。
夫婦になっても、二人の距離はぎこちない。
それでも朔也は、冷静で隙のない軍人の顔を崩さないまま、一条家の暮らしを少しずつ整えていく。
冷え切った部屋に暖を入れ、灯りを整え、父の薬を手配する。
そして澄乃の刺繍を、けっして単なる「趣味」と見なさない。
ただ、それだけのことなのに。
何故か、凍えていた心が少しずつほぐれ始める。
何気ない暮らしの中で、ゆっくりと恋が育ってゆく。
気丈な没落令嬢と、怜悧で甘い押しかけ婿の、じれ恋・大正浪漫。
※表紙イラストはAI生成のイメージ画像です。
- あらすじ
- 没落華族の娘・澄乃の前に突如として現れた、若き陸軍少佐・朔也。彼は父の借財を肩代わりし、婿入りを申し出る。家と誇りを守るため、自ら結婚を決めた澄乃。心の準備もできないまま、ぎこちない新婚生活が幕を開ける――。
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