瀧本飛鳥さんの作品一覧

僕の狂気

総文字数/3,083

ヒューマンドラマ1ページ

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 僕の世界は狂気で満ちている。  子供の頃、ハムスターを飼っていた。小さくて可愛らしくて無防備で、僕には苛立ちを覚えさせるものだった。  ぎゅうっと強く握り締める。目玉が飛び出て、心臓の鼓動がじかに感じられる。何度も繰り返した。ぽおんと飛び上がらせると手足をばたつかせて空をかく。わざと受け止めずに床まで落とす。それでもハムスターは何も無かったようにせかせかと動く。僕の手がハムスターを握り締める。ぽろぽろとうんこが出てくる。床まで落とす。何度も繰り返してもハムスターは何事もなかったように動き回る。あるいは、警戒でもしてくれれば僕の心は変わったかもしれない。
恋文〜春風のいたずら〜

総文字数/16,746

青春・恋愛1ページ

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はるうらら。というように『春』を表現する言葉はラ行が多い。 人に見られてはいけない恋文。たとえ見られても大丈夫な恋文。 青草が芽吹く。 日差しは温かく、締め切った部屋は太陽の匂いに満ち、窓の外の空は霞むように広い。 風はまだまだ肌寒く、服に迷う。 天気はあっという間に変わりやすく、昼晴れていた空も向こうの雲は急流に身を任せるままに通り過ぎ、いつの間にか空は灰色に移り変わる。 灰色雲の下で寒そうに人が歩いていく。髪が冷たそうになびいている。 ばたばたと旗を鳴らし、ぽつぽつ雨が落ちてくる。斜めに走るそれに人々は足を速める。 またある日は、広い空の遥か向こうで、雲の端が空に滲むように霞むように浮かんでいる。夕日を浴びたような煙った雲。あの雲がこちらに届くのはいつのことか。 またある日は、雲一つ無く、空は高く、澄んでいるように青く、けれど煙ったように遠くは白く、少し肌寒い風は心地よく、ずっと立っていると背が熱くなるほど日差しは温かい。 そんなはるうらら。恋するものが二人。
夢の中の人に花束を。

総文字数/7,014

その他1ページ

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「いらっしゃいませ」  顔なじみの少女が元気よく挨拶する。 「おはようございます」 「今日は何色にしますか?」 「黄色がいいな」 「黄色ですね、すぐ用意します」  少女は慣れた手つきで周囲に目を配った後、黄色をメインにした花束を作り出す。ものの五分とかけずに依頼どおりに作った花束を作り上げ、まだ幼さの残る青年に見せる。 「これでどうですか?」 「うん、それで」  青年の了解を受けて少女は包装紙で簡単にまとめて青年に手渡した。青年は代金を支払うと、軽い足取りで去っていった。
カナシミ

総文字数/13,131

異世界ファンタジー1ページ

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 その日、カナシミが死んだ。私がカナシミと出会って一週間目のことだった。  私が住んでいる町からおよそ百キロほど南に位置するこの町はおかげで一年を通して涼しいと聞く。寂れているわけではないが栄えているわけでもない。周囲からの出入りもあるが風のごとく通るに任せている。風景こそ私の故郷に似ているが、根本が異なっている。
アカイイキ

総文字数/21,270

和風ファンタジー1ページ

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 うっかりしていた。ただそれだけだ。母様にいつも叱られていることだ。おまえはどうしていつもそうなのですか、もっとしっかりしなさい! そうだね、母様。もっとしっかりしていればこんなことにはならなかったのに。
〝僕〟の話

総文字数/12,864

青春・恋愛2ページ

「17歳の“正解”」小説大賞 byスターツ出版文庫【短編部門】エントリー中
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   気づき  恋に落ちたと気づくまで大分時間が掛かった。相手は同性だったから。 〝同性愛〟は遠い世界だった。それが…  気がつけば目で追っている。他の人と仲良くしてると嫉妬に駆られる。相手が同性でも異性でも。そのうち相手のことを全て把握してないと不安になった。そんなの実の親だって無理だってことすら頭から抜け落ちていた。  意識しだした途端、自分の性別に疑問を持ち始めた。彼女と違って、自分は男なのじゃないのか、と。  疑問は膨らんでやがて強い意志となって、叫び始めた。 〝自分は男だ!〟
手のひらの温度

総文字数/2,686

SF・冒険1ページ

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「4、5、7、8、12・・・以上のものは至急技工室へ集まってください。繰り返します・・・」  ふいに始まった放送は余韻を残して廊下に響いた。黙って聞いていたわたしたちは互いに顔を見合わせた。 「今、わたし呼ばれたよね」 「あたしもだ」 「え、ほかの人はもう集まってるのかな?」 「分かんない」 「早く言った方がよさそうだ」  ばたばたと足音を立て、わたしたちは技工室へと向かった。
ポトス〜再生〜

総文字数/1,706

その他1ページ

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 花が枯れる。それだけで存在を思い知る。  寝て動かない横顔。その目は開かない。通った鼻筋の下、その唇は言葉を紡がない。かつて、僕を呼ぶ声、今は聞こえない。つい先日まで思いもしなかった現実が、横たわっていた。  長く伸びた髪に混じる白いもの、耳障りな音を漏らして呼吸するその姿に、僕の現実は急激に坂を転げ落ち、あっという間に闇に飲み込まれていった。  母さんが倒れた。夕方、部屋に満ちた太陽がゆっくり帰っていく頃、母さんは倒れた。そのまま意識を失い、僕らが見つけたときには手遅れだった。
それでも僕はアムカをする。

総文字数/4,558

その他1ページ

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 どこまでいけば答えは見つかるのだろう。  それとも答えはないのだろうか。  それとも、得ると同時に失うのだろうか。  それを望んだとして、僕は選ぶだろうか。選んでいいのだろうか。毎日繰り返される疑問に僕の神経は少しずつ削られていく。それだけが真実。いつか神経がなくなる日が来るだろうか。そしてそれまで僕はもつだろうか。神経はどこまでいこうと真実を知らせる。痛みを。苦しさを。泣き出したい不安を。少しずつ吐き出しながらここまでやってきた。けれどそれがかなわなくなったら?僕の神経は爆発するだろうか。それとも何でもない毎日をこれ以上無いほどに味わわせるだろうか。僕は何を望むだろう。渇望する死を、生きていたいとしがみつく怖さを、耐えていけるだろうか。
深淵の外れ

総文字数/2,106

その他1ページ

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「ねえ」  僕は声をかけた。 「彼女。そこのオジョウサン」  くるりと彼女が振り返り僕を見上げた。僕は言った。 「それやるんだったら、僕と行かない?」  彼女はどこへとは聞かず、小さく頷いて僕のところへ来た。僕は彼女の細い腕に自分の腕を絡ませてゆっくりと歩いた。その腕はまだ乾いたままだった。  切符を買い、電車を待つ間、彼女は一言も喋らず、僕も話さなかった。  電車に揺られ、静かな車内で、僕らだけになっても言葉が交わされることはなかった。  駅に降り立った。空っぽになった電車は細々とした風情で走り去っていった。  電車がいなくなった後、駅には僕ら二人だけが残っていた。
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