「俺の好きだったアイセイにはオリオンの三ツ星があったから、おまえとは違うよ」
人文学部に入学したばかりの逢生は、ある朝に出会った先輩に言われた言葉で心臓が止まりそうになった。
それはたぶん、僕です。
僕と何処で会いましたか?
逢生は惹かれていく大学の先輩と自分がどこかで繋がっているはずなのに、なぜか思い出せないままでいた。
ブーランジェリーが入ったメゾンの3階。
焼きたてのデニッシュの香り。
逢生の中で流れる音楽のフレーズ。
待ってて。
いろんな意味で追い付くようにするから。
思い出せないこともあるだろうけど、それでも。
I say love,
it is a flower
And you,
its only seed
このフレーズをあの人が歌ってくれたから。
僕はあの人を追いかけることにした。