凶星のハイカラ乙女 ~明治ハレー彗星奇譚~

「これはこれは、ハイカラな娘さんたちが三人も……」

 まるで酔っ払いのように近づいていく能登のあとに、幻十郎も続く。

「――っ!」

 眉をひそめている赤いリボンの娘を間近で見て、幻十郎は息を呑んだ。
 なるほど、一目で恋い慕うようになるのも納得の美貌である。しかし、幻十郎が動きを止めたのは、脳裏をよぎるものがあったからだ。

 旧都に着いてすぐ、うたた寝したときに見た、美しい悪夢――。

 悲しそうな顔で「わたしを連れ出してくださいますか?」と願ってきた少女とそっくりではないか。そのあと大蛇に巻きつかれ、不吉な箒星とともに消え去った、あの可憐な女学生が、いま確かに幻十郎の眼前にいる。

(あれは予知夢だったというのか……?)

 そんな能力は持ち合わせていないはずなのだが……。幻十郎は動揺を抑えるのに必死だった。
 女好きの本領を発揮し、ここぞとばかりに偉ぶる能登に苛立ちを感じつつ、女学生三人との会話から情報を掴んでいく。
 赤いリボンの娘は、たしかに涼風家の令嬢で、琴音という名前だとわかった。

(この琴音という娘は侮れん)

 幻十郎の白いカッターシャツが、冷たい汗で湿っていく。
 元より気が強そうな娘ではあるが、そういったものとは別種の強さを備えている。

 琴音の透き通った瞳に見つめられるたびに、己のすべてを見透かされるような心地になるのだった。