眉を下げ力無く笑う父は立ち上がり二階に上がって行ったかと思えば、一冊のアルバムを持参し戻ってきた。

「不甲斐ないお父さんで、本当にごめんな。今頃お母さんも怒ってるだろな? 未咲と明日香の名前を付けた日の誓いを忘れたのかって」
「意味、あったの?」

「お母さんから聞いたことなかったか? 名付けをした時、明日香は脳出血を起こし、助からないかもしれないと先生より宣告を受けていた。だから明日を生きられるようにと願って、明日香にしようと話し合って決めたんだ」

 初めて見るアルバムが開かれると、そこにはあまりにも小さな乳児が二人。
 それは私達姉妹のアルバムだった。

 保育器に入った姉と私が写っていて、早産だったから呼吸器などの医療処置を受けているのは分かるが、明らかに姉の方は機械設備が多く、一週間生死を彷徨ったと言われているのも納得出来るほどだった。

 アルバムは下のリビング棚に置かれているけどこれだけ父が仕舞っていたようで、それは妊娠高血圧症により私達を早くに産まないといけず自責の念に苦しんでいた母への配慮だろうと感じ取れる。

「もし明日香が助かっても、後遺症が残ると言われていた。生涯、世話が必要になるだろうと。お母さんもお父さんも、どんな形でも明日香に生きて欲しかったが、姉のことは未咲には関係ないことだと話し合って。だから未咲の名前は……」
 父より告げられる、名前に込められた意味。
 私は両親に愛されていたんだ。