空に星々が輝く頃。外灯が光る家の前に立っていた。
「大丈夫か?」
「ありがとう。お父さんが帰ってきたら話すから」
「ああ」
そう告げた私は、繋がれていた手をそっと離す。
私を支えてくれていた、その温かな手を。
だって、私を変えられるのは私だけなんだから。
そう思い、一人歩き出す。
もう辞めよう。誰かの為に生きるのは。
誰かを羨み苦しむことも。どうせ無理だと諦めることも。もう時間を止めたいなんて願うことも。
私は、私の為に生きる人生にしたい。
巡る季節を歓迎出来る、私に。
五十嵐くんの隣に居ることに自信が持てる、そんな私に。
新しい人生を開けるように玄関ドアを引くと、ガチャと鳴る音。
そこに広がった光景は先生の白い紐履ではなく、男性の大きなサンダルだった。
……お父さん。
父は最近全てに無頓着になっており、洗濯物は裏返し、コンビニで買ったおにぎりの袋は玄関に放置、靴も乱雑に脱いでいることが多かった。
だけど今はしっかり揃っていて、ゴミも落ちていない。
そんな玄関を見つめていると、バタバタと聞こえる足音。
「……未咲」
「お父さん」
家にいる時は無精髭で、ヨレた服を着て、新しく買っておいた服にも見向きもしない父。
だけど今日は、髭を剃り、以前に買っておいたシャツを着て、曲がっている背筋は真っ直ぐだった。
「お父さん。ごめんなさ……」
「未咲、話をさせてくれないか?」
「うん……」
詰まらせた声をなんとか出して前方を歩き出す父に付いて行き、テーブルに向き合って座る。
こうやって明るい部屋で顔を合わせるのは、いつぶりだろうか?
明るい部屋で見る父は、髪は乱雑で、隈があって、やつれていて、顔色が悪い。
与えられ役割に疲れ切っているのだろう。……私みたいに。
「大丈夫か?」
「ありがとう。お父さんが帰ってきたら話すから」
「ああ」
そう告げた私は、繋がれていた手をそっと離す。
私を支えてくれていた、その温かな手を。
だって、私を変えられるのは私だけなんだから。
そう思い、一人歩き出す。
もう辞めよう。誰かの為に生きるのは。
誰かを羨み苦しむことも。どうせ無理だと諦めることも。もう時間を止めたいなんて願うことも。
私は、私の為に生きる人生にしたい。
巡る季節を歓迎出来る、私に。
五十嵐くんの隣に居ることに自信が持てる、そんな私に。
新しい人生を開けるように玄関ドアを引くと、ガチャと鳴る音。
そこに広がった光景は先生の白い紐履ではなく、男性の大きなサンダルだった。
……お父さん。
父は最近全てに無頓着になっており、洗濯物は裏返し、コンビニで買ったおにぎりの袋は玄関に放置、靴も乱雑に脱いでいることが多かった。
だけど今はしっかり揃っていて、ゴミも落ちていない。
そんな玄関を見つめていると、バタバタと聞こえる足音。
「……未咲」
「お父さん」
家にいる時は無精髭で、ヨレた服を着て、新しく買っておいた服にも見向きもしない父。
だけど今日は、髭を剃り、以前に買っておいたシャツを着て、曲がっている背筋は真っ直ぐだった。
「お父さん。ごめんなさ……」
「未咲、話をさせてくれないか?」
「うん……」
詰まらせた声をなんとか出して前方を歩き出す父に付いて行き、テーブルに向き合って座る。
こうやって明るい部屋で顔を合わせるのは、いつぶりだろうか?
明るい部屋で見る父は、髪は乱雑で、隈があって、やつれていて、顔色が悪い。
与えられ役割に疲れ切っているのだろう。……私みたいに。



