私は、どうしてしまったのだろうか?

「あ?」
「ううん、何でも!」
 五十嵐くんと目が合った私は、両手を横にパタパタと振る。
 いつもの浜辺に向かう為に道路を歩いていた私達。
 最近は五十嵐くんが姉と手を繋ぎ歩いてくれるようになって正直すごく助かっているのだけど、そんな二人の姿にやたらモヤモヤしてしまう。

「しっかし、お前ら本当に双子か? 妹と全然違うじゃねーかよ」
 私に言っているのではなく姉に言っているのだと気付いた私は、また何とも言えないモヤがうごめく。
「そうだよ。しかも私がお姉ちゃんだし!」
 そんな無邪気な返答にも。

「お姉ちゃんって。たった一、二分早く生まれてきただけだろ?」
「いち、に、ふん?」
「あ、悪い悪い。……つまり、茶を飲む時間ぐらい先に生まれてきただけだろ? まあ確かに先に生まれてるけど、たったそんだけの違いだと笑ってるんだよ?」
「お姉ちゃんだもん!」
「はいはい」
 姉は怒るわけもなく、むしろ笑っている。
 最近五十嵐くんが言う軽口が分かるようになったようで、よく笑うようになった。
 冗談が通じず学校でトラブルになったこともあるから、この理解をさせてくれたのはありがたい。
 ……だけど何だろう? この気持ちは?

 砂浜で山を作って遊んでいると、どんどんと西に傾いていく太陽。
 あれ? と思ってスマホを取り出し時刻を見ると、まだ十七時過ぎと表示されていた。
 こんなに暗かったっけ?

「日が暮れるの早くなったな」
 五十嵐くんが空を眺めて、まじまじと呟く。
 そっか、今は八月中旬。夏が少しずつ終わりかけているんだな。
 見上げた空は心なしか入道雲が減っていて、小さくなっているように感じた。