「大地!」
「おう」
姉の声に小さく手を上げ、少しだけ口元を緩めるのは五十嵐くん。
海に行ってから五日後。五十嵐くんのバイトがない日に、今度は近所の海に連れて行ってもらえることになった。
「……おい」
私に目を向けてかけてくる声に、体がピクンと跳ねる。
「な、何?」
ブレスレット付けて、変だった?
ドクン、ドクン、ドクン。
この音が五十嵐くんに聞こえないか、不安で堪らなかった。
「……帽子は?」
「え、被ってるよ?」
姉の方に目をやり一言。
「いや、お前だよ!」
「……え? あ!」
自分の頭に手をやるとそこには何もなく、直射日光をガンガンと浴びていた頭は暑くなっていた。
「ごめんね! 取ってくる!」
握っていた姉の手をパッと離し、私は玄関ドアをガチャガチャと開け帽子掛けより麦わら帽子を手に取る。
その瞬間にまたドクンと鳴る心臓に、全身立つ鳥肌。
姉を置いてきてしまった。
バンッとドアを開けると、当たり前のように姉と手を繋いでくれている五十嵐くん。
「あ、ありがとう!」
体全体に染み渡る安堵感より、はぁーと大きな溜息が出てきた。
「別に。明日香から繋いできただけだし」
「……そう……なんだ」
安堵に包まれた感情は、また別の感情へと変貌していく。トゲトゲとした嫌なものに。
「大地行こう!」
「ああ。妹、行くぞ」
「……うん」
小さくしか返答出来ない。
いつもは五十嵐くんが先を歩いて、姉と私が後を付いていく形。だけど今日は、姉が五十嵐くんの横で手をブンブンと振って歩いている。
いいな、私も。
「……妹、どうした?」
「ふぇ!」
「いや、ボーとしてんから」
「何でもないの!」
首をブンブンと振り、後ろを振り向いてくれた五十嵐くんからパッと目を逸らす。
何考えててるの? 私は?
信号待ちのタイミングで、左側に広がる海を見るフリをして目をギュッと閉じる。
しかし、どうしてだろう。この気持ちだけは、一刻に収まることを知らない。
こうしている間に辿り着いた、夕方の海。
ポツポツと入道雲が浮かび、オレンジ色した夕陽が今日も海を照らしている。
「大地ー! 砂のお城作ろうー!」
「まずは休憩だ。茶飲め、茶!」
「えー!」
姉のリュックを奪いストロー付き水筒を手渡すと、不機嫌そうにゴクゴクと飲む姉。水筒を石垣に置き五十嵐くんの手を引っ張る姿に、私も付いて行こうとする。しかし。
「妹も飲んどけよ。ぶっ倒れるぞ」
私を静止し二人で砂浜に向かって行く姿に、私の立ち尽くした足がウズウズとし出した。
「おう」
姉の声に小さく手を上げ、少しだけ口元を緩めるのは五十嵐くん。
海に行ってから五日後。五十嵐くんのバイトがない日に、今度は近所の海に連れて行ってもらえることになった。
「……おい」
私に目を向けてかけてくる声に、体がピクンと跳ねる。
「な、何?」
ブレスレット付けて、変だった?
ドクン、ドクン、ドクン。
この音が五十嵐くんに聞こえないか、不安で堪らなかった。
「……帽子は?」
「え、被ってるよ?」
姉の方に目をやり一言。
「いや、お前だよ!」
「……え? あ!」
自分の頭に手をやるとそこには何もなく、直射日光をガンガンと浴びていた頭は暑くなっていた。
「ごめんね! 取ってくる!」
握っていた姉の手をパッと離し、私は玄関ドアをガチャガチャと開け帽子掛けより麦わら帽子を手に取る。
その瞬間にまたドクンと鳴る心臓に、全身立つ鳥肌。
姉を置いてきてしまった。
バンッとドアを開けると、当たり前のように姉と手を繋いでくれている五十嵐くん。
「あ、ありがとう!」
体全体に染み渡る安堵感より、はぁーと大きな溜息が出てきた。
「別に。明日香から繋いできただけだし」
「……そう……なんだ」
安堵に包まれた感情は、また別の感情へと変貌していく。トゲトゲとした嫌なものに。
「大地行こう!」
「ああ。妹、行くぞ」
「……うん」
小さくしか返答出来ない。
いつもは五十嵐くんが先を歩いて、姉と私が後を付いていく形。だけど今日は、姉が五十嵐くんの横で手をブンブンと振って歩いている。
いいな、私も。
「……妹、どうした?」
「ふぇ!」
「いや、ボーとしてんから」
「何でもないの!」
首をブンブンと振り、後ろを振り向いてくれた五十嵐くんからパッと目を逸らす。
何考えててるの? 私は?
信号待ちのタイミングで、左側に広がる海を見るフリをして目をギュッと閉じる。
しかし、どうしてだろう。この気持ちだけは、一刻に収まることを知らない。
こうしている間に辿り着いた、夕方の海。
ポツポツと入道雲が浮かび、オレンジ色した夕陽が今日も海を照らしている。
「大地ー! 砂のお城作ろうー!」
「まずは休憩だ。茶飲め、茶!」
「えー!」
姉のリュックを奪いストロー付き水筒を手渡すと、不機嫌そうにゴクゴクと飲む姉。水筒を石垣に置き五十嵐くんの手を引っ張る姿に、私も付いて行こうとする。しかし。
「妹も飲んどけよ。ぶっ倒れるぞ」
私を静止し二人で砂浜に向かって行く姿に、私の立ち尽くした足がウズウズとし出した。



