時は夕暮れ時。最後に夕日を見て帰ろうと三人で石垣に座り、ぼんやりと茜色に輝く海を眺める。
真ん中に居る姉はウトウトとし出し、私の肩に首を預けてコトンと居眠りを初めてしまった。
不意に視界に入った姉のブレスレットがキラリと光る。
……あ。
スッと目を逸らした私は顔を膝に埋め、目をギュッと閉じる。
そうすれば元通り。私はいつもの私に戻れる。いつもの……。
「おい」
「え?」
不意にかけられた声に体がピクッとなり、姉が起きていないかを覗き込む。
よほど疲れているのか一切の反応なく眠っており、後で起こせるかと不安が過ぎる。
「ごめん、何?」
「ん!」
乱暴に差し出されたのは簡易な袋にテープ留めされた、円状の物。袋から、お土産だと分かる。
「ありがとう、お姉ちゃんに直接渡してあげてくれないかな?」
「お前だよ!」
「……え?」
尖った声を出したかと思えばプイッとそっぽ向いてしまい、何だろうと袋を開け取り出すとそれは夕日に照らされキラキラと輝いていた。
「これって……」
五十嵐くんの方に顔を向けるとこちらに顔を向けており、「別に」とまた逸らされてしまう。
それは姉と作った、ビーズのブレスレットと同じ物だった。
「五十嵐くんが作ってくれたの?」
「……色合いとか分かんねーから、同じ物しか作れないけどな」
そういえばアーケードにいる間、五十嵐くんは三十分ぐらい居なかったけど、もしかしてこの為に……。
「ありがとう。大切にするから」
「別に、そんな大したことじゃねーし」
「ありがとう」
「……ああ」
こちらを見つめる五十嵐くんの目は柔らかくて優しく、私はもらったブレスレットを左手首にそっとはめる。
それは姉と同じピンク色で、夕日に照らされたビーズの粒がキラキラと輝いていた。
横に置いたリュックには赤色のキーホルダーが光り、先程の会話を思い出す。
『妹は赤。好きなのか?』
五十嵐くん。もしかして私の本心に気付いているのかな? ……本当は私が。
チラッと顔を覗き込むとまた目が合い、次は私がプイッと顔を背けてしまった。
「なんだよ?」
「ううん」
その瞬間に湧き立つ感情。
目が異様に潤み、口元が自然と緩んでいき、ドキドキと音を鳴らすぐらいに鳴る鼓動。
顔を上げれば茜色の夕日は海に照らされてビーズ粒のようにキラキラと輝き、海の波音が優しく鳴り響いている。
「……あ、寝ちゃった!」
「お姉ちゃん。あ……」
起こすの忘れていた。
スマホの時計を見ると二十分ほど過ぎでいて、昼寝時間としてギリギリのタイミングだった。
このまま五十嵐くんも私も何も言わず、姉は私達の顔を交互に見て不思議そうな表情を浮かべていたけど、こうしていく間に太陽は海に吸い込まれ消えていった。
「帰るぞ……」
「うん!」
元気よく返事する姉に対し、私はしどろもどろしてしまった。
「暗くなるから早くな!」
「うん!」
その言葉に駆け出す姉と、引っ張られてしまう私。
これじゃあ、立場があべこべた。
「明日香、次はどこ行きたいんだ?」
その言葉に、ドキッとなる胸の奥。また次があるんだ。
車より見える星々を眺めながら、その声だけは聞き逃さない。
「海がいい!」
「またか? 本当に好きだな?」
「大地と遊んだところ!」
姉の提案に、五十嵐くんは一瞬言葉を詰まらせてしまった。
「……ああ、あの海か。妹、良いか?」
「うん」
私は小さく頷く。
あの場所は家族の思い出の場所だったけど、今は姉が溺れる可能性があった浜辺へと認識が変わってしまった。
それに五十嵐くんも何か隠しているようで、何とも言い表せない怖さがあった。
「海の中では遊ばねーぞ? いいか?」
「うん!」
そう約束する二人。
一体あの日、何があったのだろう? 聞き方によっては、姉から事実を聞き出すことが出来るだろ。
しかし私は聞かない。二人が隠したいと願っているなら。
真ん中に居る姉はウトウトとし出し、私の肩に首を預けてコトンと居眠りを初めてしまった。
不意に視界に入った姉のブレスレットがキラリと光る。
……あ。
スッと目を逸らした私は顔を膝に埋め、目をギュッと閉じる。
そうすれば元通り。私はいつもの私に戻れる。いつもの……。
「おい」
「え?」
不意にかけられた声に体がピクッとなり、姉が起きていないかを覗き込む。
よほど疲れているのか一切の反応なく眠っており、後で起こせるかと不安が過ぎる。
「ごめん、何?」
「ん!」
乱暴に差し出されたのは簡易な袋にテープ留めされた、円状の物。袋から、お土産だと分かる。
「ありがとう、お姉ちゃんに直接渡してあげてくれないかな?」
「お前だよ!」
「……え?」
尖った声を出したかと思えばプイッとそっぽ向いてしまい、何だろうと袋を開け取り出すとそれは夕日に照らされキラキラと輝いていた。
「これって……」
五十嵐くんの方に顔を向けるとこちらに顔を向けており、「別に」とまた逸らされてしまう。
それは姉と作った、ビーズのブレスレットと同じ物だった。
「五十嵐くんが作ってくれたの?」
「……色合いとか分かんねーから、同じ物しか作れないけどな」
そういえばアーケードにいる間、五十嵐くんは三十分ぐらい居なかったけど、もしかしてこの為に……。
「ありがとう。大切にするから」
「別に、そんな大したことじゃねーし」
「ありがとう」
「……ああ」
こちらを見つめる五十嵐くんの目は柔らかくて優しく、私はもらったブレスレットを左手首にそっとはめる。
それは姉と同じピンク色で、夕日に照らされたビーズの粒がキラキラと輝いていた。
横に置いたリュックには赤色のキーホルダーが光り、先程の会話を思い出す。
『妹は赤。好きなのか?』
五十嵐くん。もしかして私の本心に気付いているのかな? ……本当は私が。
チラッと顔を覗き込むとまた目が合い、次は私がプイッと顔を背けてしまった。
「なんだよ?」
「ううん」
その瞬間に湧き立つ感情。
目が異様に潤み、口元が自然と緩んでいき、ドキドキと音を鳴らすぐらいに鳴る鼓動。
顔を上げれば茜色の夕日は海に照らされてビーズ粒のようにキラキラと輝き、海の波音が優しく鳴り響いている。
「……あ、寝ちゃった!」
「お姉ちゃん。あ……」
起こすの忘れていた。
スマホの時計を見ると二十分ほど過ぎでいて、昼寝時間としてギリギリのタイミングだった。
このまま五十嵐くんも私も何も言わず、姉は私達の顔を交互に見て不思議そうな表情を浮かべていたけど、こうしていく間に太陽は海に吸い込まれ消えていった。
「帰るぞ……」
「うん!」
元気よく返事する姉に対し、私はしどろもどろしてしまった。
「暗くなるから早くな!」
「うん!」
その言葉に駆け出す姉と、引っ張られてしまう私。
これじゃあ、立場があべこべた。
「明日香、次はどこ行きたいんだ?」
その言葉に、ドキッとなる胸の奥。また次があるんだ。
車より見える星々を眺めながら、その声だけは聞き逃さない。
「海がいい!」
「またか? 本当に好きだな?」
「大地と遊んだところ!」
姉の提案に、五十嵐くんは一瞬言葉を詰まらせてしまった。
「……ああ、あの海か。妹、良いか?」
「うん」
私は小さく頷く。
あの場所は家族の思い出の場所だったけど、今は姉が溺れる可能性があった浜辺へと認識が変わってしまった。
それに五十嵐くんも何か隠しているようで、何とも言い表せない怖さがあった。
「海の中では遊ばねーぞ? いいか?」
「うん!」
そう約束する二人。
一体あの日、何があったのだろう? 聞き方によっては、姉から事実を聞き出すことが出来るだろ。
しかし私は聞かない。二人が隠したいと願っているなら。



