さて、このノートを書くようになった経緯を、もう少し詳しく書いておこうと思う。

 わたしの目に映り、思いついたことを、「誰も見ないだろう」と、退屈な実家暮らしの間に書きつづったものだ。あいにくと、他人には不都合な失言まがいの箇所もちょこちょこあるので、「うまーく隠したわ」と思っていたのに、心ならずも流出してしまったの!
 推しへの愛を全開にして、自由に書いたエッセイだし、人並みに批評されたい、なんて望んだわけじゃない。

『枕草子』というタイトルについても説明しておこうかな。
 あるとき、伊周さまが、定子さまに真新しいノートを何冊もプレゼントなさった。

(わあ、素敵だわ!)

 真っ白な紙を()じてある豪華なノートに、目を奪われるわたし。

「これに何を書いたらいいかしら。(みかど)は『史記(しき)』(中国の歴史書)を書き写されたそうだけど……」

 迷っている定子さまに、わたしは申し上げた。

「帝が【敷物(しきもの)】なら、中宮さまは【枕】といったところでございましょう」

 和歌で使う「しきたへのまくら」に掛けた会心の切り返し!

「まあ! 気の()いた言い回しじゃないの。じゃあ、この【枕】はそなたにあげるわ」
「ありがたき幸せ……」

(やったあ!)

 心の内でガッツポーズして、定子さまから(うやうや)しく受け取った。

 ……そんなワケで、思っていることをあれやこれやと、頂戴したノートいっぱいに書き連ねていったら、とりとめのない内容になってしまったみたい。
 だけど、意外と評判いいし、思いがけずバズってしまって……。
 ああ、お恥ずかしい!

 本当に、大したことないエッセイなんだから、あんまり褒めないでよね!