「細かいことに気が付けるのも、才能のひとつなんだろうな」
「ほ……ほら、自分がそうだからさ、困っている人や何か言いたいのに言えないような気弱そうな人とか子どもに、気付いちゃうのかも。それに……」
「それに?」

 続きを言いかけて、口ごもる。だって、この話は、前にも央寺くんにしたから。

「それに……あの、私、バス停で具合悪そうなおじさんがいた時、声をかけきらなくて素通りして、それでめちゃくちゃ後悔したことがあるから……。だから、気になったらちゃんと行動できるようにしたいと……思ってて……」
「……あぁ」

 言い終えてちらりと央寺くんを見ると、無表情だった。覚えているのかいないのか判断がつかない。

「言ってたね、それ。前にも」

 でも、すぐにそう言い足した央寺くんに、なぜか私は今の今まで自然に話せていたのに、その自然が急にわからなくなった。央寺くんが覚えていてくれたことが嬉しいような気もするし、覚えられていたことが、はずかしくも感じる。