「なんていうか、全然納得できないんだけど……でも、私が納得どうこう言う話じゃないもんね」

真梨の言葉に胸を打たれる。

なんていい子なんだろう。こんないい子が同じクラスにいて、しかも友達になってくれて、私の高校生活は本当に運が良かった。

「凪沙が本気でそう考えてて、凪沙がそれでいいと思ってるなら、周りが口出しすることじゃないよね。だから、ごめん、もう何も言わない」
「……ありがとう」
「でも、三島くんはちゃんと納得してるの?」

うん、とも、ううん、とも答えられなくて、

「……してもらわなきゃ困る」

とだけつぶやいた。

彼女は怪訝そうに眉をひそめたけれど、さっきの自分の言葉通り、それ以上は何も訊ねてこなかった。

「そう……。行こっか、遅れちゃう」

微笑みながら優しく手をつかまれて、不覚にも泣きたくなってしまった。

「……うん、行こう」

真梨に手を引かれて早足で音楽室に向かう。

歩いているうちに小さく嗚咽が洩れてしまったけれど、賢くて優しい彼女は気づかないふりをしてくれた。

私は必死に声を励まして、

「……ありがとう、真梨。真梨に会えてよかった」

今までの感謝を全部こめて言葉を絞り出した。