CMに入ったテレビを呆然と見つめて、

「華も枯れるんだな」

率直な感想を述べた。
向かい側で聞いていた秋本は笑声を上げる。

「そう思ってもしゃーない。しゃーない」

ドンマイだと励ましてくれる。
 

CMが終わったテレビは、芸能ニュースから普通の日常ニュースへと変わる。
 

俺は目を丸くした。
ニュースキャスターがとあるタワーについて報道してるんだけどそのタワー、“東京スカイツリー”っていうらしい。

15年後の未来は新しい東京タワーができるのか?


なんかもうびっくり仰天だな。

15年で日本も此処まで変わるなんて。


驚き呆ける俺に何を思ったのか、秋本がテーブルに何かを置いてこれを見てと声を掛けてくる。

「あ。それ」昨日、携帯ショップで見た薄い携帯? ポケベル? じゃんか。

名前はスマートフォンだっけ。

 
「これね、タッチ動作なのよ」

「タッチ動作? うわっ、画面が変わった。触っただけで変わるのか?」
 

興味津々にスマートフォンを見ていた俺は、「これと違うのか?」リビングに放置されていた通学鞄からポケベルを取り出して秋本に見せる。

「なつい!」

秋本は別の意味で興奮した(なついってなんだ?)。

ポケベルを手に取って、あったあったと勝手に触り始める。


だから俺も勝手にスマートフォンを触らせてもらった。


スッゲェな触っただけで、画面がパッパッパッと変わっちまうなんて。

触りながら、「これはポケベルか?」相手に質問。

「携帯の進化版よ」

秋本は返事しつつ、ポケベルを操作している。

 
「今の時代、ガキんちょでも携帯を持つ時代なのよ。私達なんて携帯とか高級品も高級品だったのにね」

「父さんの持ってるの、PHSだしな」

「ははっ。それもなつい」