あれは中学二年生の中間テストが終わった後だった。
ちょうど梅雨が始まった頃、雨が降ってジメジメして、気持ちまで湿っぽかった。
『……はぁ』
放課後の委員会での集まりが終わってやっと帰れるのに、溜息が止まらなかった。
また友達関係で気を使わないといけない。
だけどこんな顔見せるわけにもいかず、私はニコッと笑って一気にテンションを上げる。
『ごめんね、遅くなってー。……あれ?』
薄暗い教室には誰も居なくって、みんながいつもいる席は椅子が乱雑に置かれているだけだった。
帰った、のかな? 雅も……?
尚美と真凛はともかく、雅まで?
……大丈夫かな?
この時、人の心配している場合ではなかった。既に始まっていたのだと、当時の私は全く気付いていなかった。
次の日の朝、スマホが鳴った。
『ごめん、今日は具合悪くて。先に行ってくれる?』
雅とは小学生の頃から一緒に登校していて、風邪を引いたり寝坊した時に先に行ってもらっていた。
最近、雅は寝坊が多いらしく一緒に登校出来ないことが増えていたけど気にしてはいなかった。だけど。
スタンプも絵文字の一つもない文章は珍しく、よっぽど具合が悪いのだろうと、のど飴を持って学校に行った。
教室に入ると、先に行っててと言っていたはずの雅が席に座っていた。
『雅、大丈夫?』
いつものように雅の額に触れようとすると、手を強く掴まれた。
『あ、ごめん』
そっか、そうだよね。小学生からの仲だからって軽く触ろうとしてたけど、そうゆうの良くないよね。
だけど、どうしてだろう。雅の手、震えていて……。
『雅ぃ〜、おっはよぉ!』
えっ、雅?
尚美の弾む声に振り返ると、真凛と二人並んでいて、その笑顔は雅に向かっていた。
二人は普段から、雅を居ないものとしていた。だから仲良くなって良かったと思った。
だけどなんだろう、この不穏さは。
『あ、おはよう』
私のあいさつは誰にも届かず、無視という形で返ってきた。
聞こえなかったなんて、楽観的な考えはなかった。これって。
『雅、あっち行こっ』
一度も目を合わせてもらえなかった私が視線を感じると、それはクラスの女子たちの鋭いものだった。
別にクラスの子たちに好かれてはなかったけど、特別嫌われてもなかった。
言えば興味がない存在。必要最低限しか話してないし、恨まれることもない。
なのに一体、何がどうなってるの?
ピクッと不快な痙攣が起きた。
隣の座席に、大学生っぽい女性が座っただけだった。
車窓からの景色に雪はなくなり、駅前を後にしたバスは一気に乗客が増えていた。
空いている車内は大丈夫だけど、人が増えてくるとこの閉鎖空間が一気に苦しくなっていく。
周りの視線が怖くて、自分を睨んでいるような気がして、息まで苦しくなって。
今日は無理だ。
停車ボタンを連打し、隣の女性が引いている顔に余計に息が詰まるけど、バスの前方に駆けた私は定期券を鳴らして降りて行った。
ちょうど梅雨が始まった頃、雨が降ってジメジメして、気持ちまで湿っぽかった。
『……はぁ』
放課後の委員会での集まりが終わってやっと帰れるのに、溜息が止まらなかった。
また友達関係で気を使わないといけない。
だけどこんな顔見せるわけにもいかず、私はニコッと笑って一気にテンションを上げる。
『ごめんね、遅くなってー。……あれ?』
薄暗い教室には誰も居なくって、みんながいつもいる席は椅子が乱雑に置かれているだけだった。
帰った、のかな? 雅も……?
尚美と真凛はともかく、雅まで?
……大丈夫かな?
この時、人の心配している場合ではなかった。既に始まっていたのだと、当時の私は全く気付いていなかった。
次の日の朝、スマホが鳴った。
『ごめん、今日は具合悪くて。先に行ってくれる?』
雅とは小学生の頃から一緒に登校していて、風邪を引いたり寝坊した時に先に行ってもらっていた。
最近、雅は寝坊が多いらしく一緒に登校出来ないことが増えていたけど気にしてはいなかった。だけど。
スタンプも絵文字の一つもない文章は珍しく、よっぽど具合が悪いのだろうと、のど飴を持って学校に行った。
教室に入ると、先に行っててと言っていたはずの雅が席に座っていた。
『雅、大丈夫?』
いつものように雅の額に触れようとすると、手を強く掴まれた。
『あ、ごめん』
そっか、そうだよね。小学生からの仲だからって軽く触ろうとしてたけど、そうゆうの良くないよね。
だけど、どうしてだろう。雅の手、震えていて……。
『雅ぃ〜、おっはよぉ!』
えっ、雅?
尚美の弾む声に振り返ると、真凛と二人並んでいて、その笑顔は雅に向かっていた。
二人は普段から、雅を居ないものとしていた。だから仲良くなって良かったと思った。
だけどなんだろう、この不穏さは。
『あ、おはよう』
私のあいさつは誰にも届かず、無視という形で返ってきた。
聞こえなかったなんて、楽観的な考えはなかった。これって。
『雅、あっち行こっ』
一度も目を合わせてもらえなかった私が視線を感じると、それはクラスの女子たちの鋭いものだった。
別にクラスの子たちに好かれてはなかったけど、特別嫌われてもなかった。
言えば興味がない存在。必要最低限しか話してないし、恨まれることもない。
なのに一体、何がどうなってるの?
ピクッと不快な痙攣が起きた。
隣の座席に、大学生っぽい女性が座っただけだった。
車窓からの景色に雪はなくなり、駅前を後にしたバスは一気に乗客が増えていた。
空いている車内は大丈夫だけど、人が増えてくるとこの閉鎖空間が一気に苦しくなっていく。
周りの視線が怖くて、自分を睨んでいるような気がして、息まで苦しくなって。
今日は無理だ。
停車ボタンを連打し、隣の女性が引いている顔に余計に息が詰まるけど、バスの前方に駆けた私は定期券を鳴らして降りて行った。



