感想ノート

  • まず、この作品はいじめという非常に扱いの難しい題材を、単純な善悪の物語にしなかった点が非常に優れています。

    冒頭では、真子が明確に被害者として提示され、読者も自然にその立場から物語へ入っていきます。
    ところがイジメ加害者、林原雅と視点が切り替わった瞬間、それまで見えていた景色が一気に反転する。この構成が非常に巧いです。
    読者が一度作った真子=被害者、雅=加害者という認識を、雅の内面を描くことで少しずつ揺さぶっていく。
    単なる視点変更ではなく、読者自身の判断を揺さぶる仕掛けになっています。

    また、真子側から見れば、雅は自分を裏切った友達です。
    しかし雅側から見ると、真子は自分を救ってくれた唯一の友達であると同時に、自分を見捨てるかもしれない存在でもある。この二重性が作品に厚みを与えています。

    そしてラストの「真子って……」という切り方も秀逸です。
    ここまで積み上げてきた二人の過去を踏まえたうえで、最も重要な言葉の直前で止めることで、物語に強烈な引きを作っています。何を言うのかを知りたいという純粋な読書欲が生まれる。

    特に雅という人物造形が素晴らしいです。
    弱いからこそ誰かに依存し、傷ついているからこそ他人を傷つける。
    その矛盾を抱えたまま、それでも真子を大切に思っている。
    この嫌いになりきれない加害者を成立させているところに、作者の人物描写の強さがあります。

    読者にこの二人のどちらが悪いのかと問いかけるのではなく、人間関係って、こんな簡単に善悪で分けられるものなのかと考えさせる。そこまで作品を持っていけているのは、大きな魅力です。

    人物の感情を追わせる力と、視点転換によって物語の意味を変える構成力にはかなり光るものがあります。
    とりわけ、冒頭で提示した印象を後半でひっくり返し、そのうえでさらにでは本当のところはどうなのかという疑問を残す構成は、読者を最後まで離さない強さがあるとおもいます。


    「もしあのとき違う言葉を選んでいたら、この二人はどうなっていたんだろうな」
    そう考えさせられる物語でした。。

    透凪ひるめ 2026/10/01 13:19

    読んでくださり、ありがとうございます。

    被害者は無自覚に相手を傷付けていた。加害者は弱いからこそ、これ以上自分が傷付かないように相手を貶めてしまった。
    伝えたかった人間の弱さ、すれ違いを、感じてもらえて、とても嬉しいです。

    雅は加害者だけど、どこか憎みきれない。そんな人物像で書いていけたらと思います。

    感想、ありがとうございました。

    作者からの返信 2026/10/05 00:11

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