同じ日の違う記憶

ヒューマンドラマ

同じ日の違う記憶
作品番号
1790835
最終更新
2026/10/12
総文字数
23,320
ページ数
19ページ
ステータス
未完結
いいね数
1
 誠心誠意謝られたら、過去にされた酷い仕打ちでも許さないといけませんか?

 私、小崎真子は中学生のころにイジメに遭っていた。
 親友だと信じていた子の裏切りをキッカケに。

 あれから三年、元親友が突然謝りにきた。
 あの時は、ごめんなさいって。
 何、いまさら言ってんの? 私の人生、めちゃくちゃにしたくせに。

 高校生の今は友達が出来て、楽しい学校生活を送っているからもういい?
 泣いて謝られたから許すべき?
 過去のこと、いつまで根に持ってるの?
 相手を恨んで生きていても幸せにはなれない?

 そんな正論というトゲが、私の胸を容赦なく突き刺していく。

 私は酷い人間なの? 泣いて謝る子を許せないぐらい、非道な人間なの? イジメられたのは私が悪かったの? 許すべきなの?
 ねえ誰か、教えてよ──。
あらすじ
小崎真子、高校二年生の十七歳。
中学二年生の頃にイジメに遭っていたが、高校進学をキッカケに心機一転し、友達を作りクラスに馴染んでいた。
そんな真子の元に、中学生の時にイジメのキッカケを作った元親友が現れて謝ってきた。
親友に裏切られた怒り、クラスでイジメられた苦しみ、人を信じられない悲しみ。
それらを抱えた真子は、元親友を許すべきなのだろうか?

この作品の感想ノート

まず、この作品はいじめという非常に扱いの難しい題材を、単純な善悪の物語にしなかった点が非常に優れています。

冒頭では、真子が明確に被害者として提示され、読者も自然にその立場から物語へ入っていきます。
ところがイジメ加害者、林原雅と視点が切り替わった瞬間、それまで見えていた景色が一気に反転する。この構成が非常に巧いです。
読者が一度作った真子=被害者、雅=加害者という認識を、雅の内面を描くことで少しずつ揺さぶっていく。
単なる視点変更ではなく、読者自身の判断を揺さぶる仕掛けになっています。

また、真子側から見れば、雅は自分を裏切った友達です。
しかし雅側から見ると、真子は自分を救ってくれた唯一の友達であると同時に、自分を見捨てるかもしれない存在でもある。この二重性が作品に厚みを与えています。

そしてラストの「真子って……」という切り方も秀逸です。
ここまで積み上げてきた二人の過去を踏まえたうえで、最も重要な言葉の直前で止めることで、物語に強烈な引きを作っています。何を言うのかを知りたいという純粋な読書欲が生まれる。

特に雅という人物造形が素晴らしいです。
弱いからこそ誰かに依存し、傷ついているからこそ他人を傷つける。
その矛盾を抱えたまま、それでも真子を大切に思っている。
この嫌いになりきれない加害者を成立させているところに、作者の人物描写の強さがあります。

読者にこの二人のどちらが悪いのかと問いかけるのではなく、人間関係って、こんな簡単に善悪で分けられるものなのかと考えさせる。そこまで作品を持っていけているのは、大きな魅力です。

人物の感情を追わせる力と、視点転換によって物語の意味を変える構成力にはかなり光るものがあります。
とりわけ、冒頭で提示した印象を後半でひっくり返し、そのうえでさらにでは本当のところはどうなのかという疑問を残す構成は、読者を最後まで離さない強さがあるとおもいます。


「もしあのとき違う言葉を選んでいたら、この二人はどうなっていたんだろうな」
そう考えさせられる物語でした。。

2026/10/01 13:19

この作品のひとこと感想

すべての感想数:3

この作品をシェア

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

pagetop