同じ日の違う記憶

「昨日の子と話、出来た?」
 登校すると友達の奈々子と美希が、いつもの感じで話しかけてきてくれた。

 雅はよりにもよって、友達との下校中に声をかけてきた。
 二人は気を遣って先に帰ってくれたから雅と私の間で「何があった」かは知らないだろうけど、「何かがあった」のは察しているだろう。
 雅が私に対して、後ろめたさを感じていることも。

 大体、雅が私の元に来たのは何のためなんだろう? 謝りたい?
 嘘、本当は騙されて雅の手を取った私を笑うためだったんじゃないの?
 そう思った途端、頭がクラっとした。

「何があったのか知らないけどさ、許してあげたら? あんな寒い中で、ずっと待ってたみたいだし」
 一瞬、目がギラついた自覚はあった。
 二人は顔を硬直させ、そっと目を逸らしてきた。

「ごめん。何も知らないのに余計なこと言って」
「あ、いや、ごめん。奈々子の、言う通りだと思うし……」
 瞬きをして目の力を抜いて、出にくい声をなんとか出す。余計なことを考えないで口元を緩めて、ちゃんと笑わないと。

「昨日の子、バス間に合ったかな?」
 教室の後ろから話し声が聞こえたような気がしたけど、また余計な雑念が湧きそうで振り返らなかった。