同じ日の違う記憶

「真子、本当にごめんなさい……」
 情けないぐらいに涙と鼻水が止まらない。
 なんとか我慢していたのに頭を下げた途端にポタポタと落ちてきて、私に泣く資格なんてあるはずないと分かっているから強く目を閉じて涙を堰き止め、鼻を啜る。
 手で拭わないのは、仕草で泣いているとアピールしたくないから。

 強く瞼を閉じていたから耳はよく聞こえていて、ザクザクザクと音がやたらに大きく聞こえる。
 そっと目を開けると、足元に見えていた長靴は足跡だけになっていた。涙と鼻水をサッと拭って顔を上げると見えたのは、厚着のコートを着ているのに変わらず細い背中だった。
 遠くなっていく後ろ姿、小さくなっていく雪を鳴らす音。
 約二年ぶりに再会してペラペラと話していた私に対して、一言も声を出さなかった真子。その背中に言われたような気がした。
 絶対に許さない、と。

 ゴトッ。
「……あ」
 足に感じた小さな衝撃によってようやく意識が戻った私は、落としてしまった学生カバンに手を伸ばす。
 拾いたいけど指が悴んで思う通りに動いてくれず、いつも以上に鈍臭い自分にまた涙が出てくる。
 早くしないと、また笑われて……。笑われる?

 ハッとなって顔を上げると、私が立っているのは高校の校門前だった。
 下校時間で生徒が通り過ぎていく、そんな場所。

 待って。なに、真子の学校まで押しかけてんの?
 メイワクに決まってんじゃん! 友達と居たみたいだし。
 ……友達、居るんだな。
 メイワクの次にフッと思ったことは、あまりにも身勝手な本心。
 ホント、自分ばっかだな私。