同じ日の違う記憶

「……っ!」
 ピクッとなり目を開けると、天井がグルグル回る感覚も、体全体の火照るような熱さもなくなっていた。
 カーテンから漏れる光りが夕陽だったら良いなと思いつつスマホに触れると、これは朝陽だと分かり、もう一度熱が出ないかと願ってしまった。
 ……学校、行かないとだよね?

 真子の学校に行った次の日、ホントに風邪を引いた私は学校を二日休んだ。
 制服のブレザーに着替えて、髪を整えて、メイクをすると、どう頑張っても可愛くなれない私が出来上がる。
 学生カバンを持とうとすると、机の引き出しが薄ら開いてて、そこには水色の折りたたみ傘とピンクのシュシュがこちらを覗いている。
 ……せめて、傘を持って行けば良かったのに。
 もう二度と真子に会えないと悟った私は、引き出しを強く締め部屋から出ていく。


 あーあ、大病にならないかな。
 トラックが私の元に飛び込んで来ないかな。
 信号待ちをしながら、また同じことを考える。
 病気や不慮な事故は幸せな人を襲うのに、どうして私のようなどーでもいい人間には訪れないのだろう。
 ……サイテーなことを考えていると分かってる。
 生きたくても生きられない人、突然明日を奪われた人がいることだって分かってる。
 でもさ、生きたくない人間だっているんだよ。明日に希望を見出せない人間だっているんだよ。
 なのに、生きたくても生きられない人がいるんだからとか言われても、結局それは幸せな人の言い分なんでしょ? ってイライラする。
 そう言う人たちは、私の人生生きてみてよ! それでも同じこと言える?
 名指しで「キモい」とか、「死んだら面白いのに」とか陰口叩かれたことある?
 そんな人生生きたら、価値観ガラッと変わるんじゃない?
 ま、ムリなんだけどね。

 聞き慣れた信号機の音に、また不慮の事故は起こらなかったのだと溜息を吐いた私は、また今日も決められた一日に向かって歩き出す。