同じ日の違う記憶

『ごめーん、寝坊したぁ! 先行ってて!』
 ホントはとっくに起きていて、今すぐにも学校に行けます状態だったのに、そう真子にメッセを送った。
 いつも一緒に登校しているけど、二年になってからは理由をつけては時間をズラすようにした。
 だって朝から嫌なスタート切りたくないもん。
 あーあ、学校行きたくないなー。

『雅って、ホントずんぐりムックリだよねぇ!』
『分かるー! 制服、パッツパツじゃん。隣にいると恥ずかしいんですけどぉ!』
 ……またか。
 存在感がないのが唯一の取り柄で、登校してきた私に誰も気付いていないようだった。
 歩いてきた廊下を往復する羽目になり、登ってきた階段を降りていく。言われると余計に制服が締め付けてくるような気がして、膨れ上がったお腹周りの生地を伸ばす。
 不意に浮かんだのは、さっきの光景だった。
 あ、違う。もう一つ、特技あった。
 私って、瞬間記憶能力が高いんだ。
 さっき見た場面が鮮明に記憶として残るなんて、なかなかすごいじゃん私。
 ……ただ、いらなかったな、そんな能力。
 一瞬だけ見えた、真子の顔。二人の悪声に、真子も口角を上げていたなんて覚えていたくなかった。

 そう思った私は、お揃いのシュシュをそっと外し髪を下ろした。
 ボサっと落ちてくる剛毛。でも、それで良いの。
 真子。私、あなたにまで拒否されたらここにいる意味なんてないよ。