同じ日の違う記憶

真子(まこ)……、本当にごめんなさい」
 鼻を啜る音が、やたら不快に聞こえる。
 灰色の空から降る雪も、コートを貫通してくる冷たい風も、目の前で頭を下げている人に降り積もった雪も、履いているローファーさえも、全てが不愉快極まりない。

 ザクザクザク。
 校門前の踏み固められた雪は硬く、滑り止め付きの長靴が今日も良い仕事をしてくれる。
 高校からバス停まで徒歩十分、振り返ると誰も居なかった。
 本降りになった牡丹雪に、傘が重たいと感じたころ。雪のせいで十五分遅れたバスはようやく来てくれる。
 吹雪で視界が悪くなった周囲を見渡すも小さな人影は見当たらず、私はためらうことなくバスに乗り込む。
 夕方の車内はいつものようにガラガラで後ろから二番目の座席に座ると、暖かな暖房に鼻がグスグスとしてきて、また不快感が蓄積されていく。

 (みやび)、あなたは知らないだろうね?
 山里高校は山付近に立地してあるから、私たちが住む町と違って大雪が降ること。
 あんなオシャレなローファーでは、雪道は歩けないこと。
 バスは一時間に一本しかないこと。
 地元近くで進学したあなたに、分かるはずないよね。


『真子ってさぁ、最近調子乗ってるよね?』
『どうせアタシらのこと、足手まといとかしか思ってないでしょ?』
『言い訳しないでよっ! 雅にそうグチったの知ってるんだからね!』

「……違う、私は何も言ってない……」
 マフラーをしていることをいいことに、ボソッと小さく呟く。吐き出した息は熱く、目まで熱くなってきて、心底嫌になる。
 本当にそんなこと思っていなかった。
 ただみんなで走って、一秒でもタイム縮めて、県大会優勝して、全国大会出場を目指したいだけだった。
 足手まといなんて思うわけないじゃない、最高のチームだったんだから!

 雅、どうして?
 なんで、あんなデタラメ言ったの?