——心音のことが好きだ。付き合ってください。
和真から告白を受けたのは、一年生の二月のこと。たまにしか降らない雪が、放課後までにどんどん強くなっていった日だった。傘を持ってきていなかった私は、下駄箱で呆けたように立ち尽くしていた。激しく吹雪く外の世界を眺めながら、雪が止むのを待った。
和真がいつのまにか隣にいて、「いつ止むかな〜」なんて呑気に話しかけてきた。「俺、雪国出身だから慣れてるけどさ、東京で降る雪って特別感があるよな」と。私は正直に、雪が苦手だと伝えた。「なんで?」って聞かれたので、「呑み込まれそうだから」と答えた。
——大量の雪に呑み込まれて、自分が自分でなくなっちゃいそうなの。それでいつか、雪に埋もれて息ができなくなったらどうしようって。
——面白いこと考えるんだな。東京じゃ、埋もれるほど雪も積もんないよ。
——それはそうだけど……。でも、こんなに吹雪いてるの見てたらやっぱり怖いよ。
——じゃあさ、心音が雪に溺れそうになったら、俺が引っ張り上げてやるよ。
——え? それってどういう——。
——心音のことが好きだ。付き合ってください。
あまりにも突然の告白すぎて、無意識のうちに外を真っ白に染めていく雪と、和真の横顔を交互に見つめた。和真は見たことないくらい真剣な表情をしていた。和真と出会ったのは高校一年生になってからだけど、緊張感の滲む頬が今にもぴくりと動きそうだった。
私はそっと、そんな彼の頬を撫でた。どうしてそんなことをしてしまったのか分からない。
この人を好きになりたい。
好きだから、ではなくて、ただ無性に愛しいと思った。
——うん、よろしくお願いします。
気がつけば彼の告白を受け入れていた。
私も好き、というような甘い言葉も何も出てこなかったことが申し訳なかったけれど、それでも和真は頬を綻ばせて喜んでくれた。
——よっしゃー! 本当に心音と付き合えるんだな。ありがとう! よろしく。
無邪気な少年のように喜ぶ彼を見ていると、激しい雪を見ながら凍えていた私の心に、温かな灯火がついたような気がした。
私たちが付き合い始めたという噂はすぐにクラス中に広まり、二年生に上がる頃にはすっかり学年で噂になっていた。二年二組で、私たちの仲を知らない人はいない。原田先生にもバレていたから、職員室で話題に上がっていたかもと思うと、小っ恥ずかしいことこの上なかった。
和真は周りの目なんか気にせず、私を好きでいてくれた。部活終わりに一緒に帰宅したり、テスト明けに二人でファミレスに居座って慰労会をしたり、と青春の一ページを埋めてくれる。和真との日々は、私の日常を確実に色付けてくれていた。
和真から告白を受けたのは、一年生の二月のこと。たまにしか降らない雪が、放課後までにどんどん強くなっていった日だった。傘を持ってきていなかった私は、下駄箱で呆けたように立ち尽くしていた。激しく吹雪く外の世界を眺めながら、雪が止むのを待った。
和真がいつのまにか隣にいて、「いつ止むかな〜」なんて呑気に話しかけてきた。「俺、雪国出身だから慣れてるけどさ、東京で降る雪って特別感があるよな」と。私は正直に、雪が苦手だと伝えた。「なんで?」って聞かれたので、「呑み込まれそうだから」と答えた。
——大量の雪に呑み込まれて、自分が自分でなくなっちゃいそうなの。それでいつか、雪に埋もれて息ができなくなったらどうしようって。
——面白いこと考えるんだな。東京じゃ、埋もれるほど雪も積もんないよ。
——それはそうだけど……。でも、こんなに吹雪いてるの見てたらやっぱり怖いよ。
——じゃあさ、心音が雪に溺れそうになったら、俺が引っ張り上げてやるよ。
——え? それってどういう——。
——心音のことが好きだ。付き合ってください。
あまりにも突然の告白すぎて、無意識のうちに外を真っ白に染めていく雪と、和真の横顔を交互に見つめた。和真は見たことないくらい真剣な表情をしていた。和真と出会ったのは高校一年生になってからだけど、緊張感の滲む頬が今にもぴくりと動きそうだった。
私はそっと、そんな彼の頬を撫でた。どうしてそんなことをしてしまったのか分からない。
この人を好きになりたい。
好きだから、ではなくて、ただ無性に愛しいと思った。
——うん、よろしくお願いします。
気がつけば彼の告白を受け入れていた。
私も好き、というような甘い言葉も何も出てこなかったことが申し訳なかったけれど、それでも和真は頬を綻ばせて喜んでくれた。
——よっしゃー! 本当に心音と付き合えるんだな。ありがとう! よろしく。
無邪気な少年のように喜ぶ彼を見ていると、激しい雪を見ながら凍えていた私の心に、温かな灯火がついたような気がした。
私たちが付き合い始めたという噂はすぐにクラス中に広まり、二年生に上がる頃にはすっかり学年で噂になっていた。二年二組で、私たちの仲を知らない人はいない。原田先生にもバレていたから、職員室で話題に上がっていたかもと思うと、小っ恥ずかしいことこの上なかった。
和真は周りの目なんか気にせず、私を好きでいてくれた。部活終わりに一緒に帰宅したり、テスト明けに二人でファミレスに居座って慰労会をしたり、と青春の一ページを埋めてくれる。和真との日々は、私の日常を確実に色付けてくれていた。



