「そういう心配を迷惑って思われたら、俺は生きていけない」


 クラレッドは私から目を逸らすことなく、澄んだ瞳で私を見つめてくる。


「俺は、ディアナが大切。だから、これからも心配させてほしい」


 体中が熱くなりそうなこの感覚が何だか恥ずかしくて、クラレッドから思い切り眼を逸らしたいと思った。

 だけど、そんなに真剣な優しい瞳で見つめられたら、逸らしたいはずの気持ちも消えていってしまう。


「俺、昔ディアナに救ってもらったことがあるんだよ」

「昔……?」

「国の派遣仕事で、ダンジョンに潜っていた頃に大怪我して……」


 ずっとクラレッドと視線を交えていたかったけれど、そろそろ体は限界を訴える。


「って、ディアナ!?」


 心の傷が癒されたからといって、熱までは都合よく下がってはくれない。


「え、あの、これからいい話をするところだったんだけど……」


 治癒魔法を使う人たちには、大きな欠点がある。


「……ま、いっか」


 自分の傷や病気だけは、治療することができないということ。


「これから、しっかりと恩を返していくよ」


 だから私は、医療業界を滅ぼすほどの治癒魔法を持つ魔女だと噂されたとしても……体はずっと弱いまま。

 医療業界から火炙りで殺されることになる前に、多分風邪をこじらせて亡くなってしまうことになると思う。


「覚悟してね、ディアナ」