「…………」
ロメウド様の幸せとは、どういうものだったのか。
他人の幸せは、他人にしか答えを出すことはできない。
外部の人間がロメウド様の幸せとは何かを考えたところで、永遠に答えは導き出されない。
それでもロメウド様の幸せがなんなのか考えてしまうのは、私の日常にロメウド様が入り込んでしまったせいだと思う。
ロメウド様のいる毎日が、私にとっての当たり前だったから。
「……好きだった?」
熱を吸い取ってくれた木綿の布を交換するタイミングで私は目を覚ましたらしく、私は再びクラレッドと視線を交える。
「夢の中で、名前呼んでたよ」
それだけを伝えて、クラレッドは冷たさを取り戻した布を私の額に置いてくれる。
「優しいね……クラレッドは……」
「俺のこと、優しいって言葉で片付けようとしてるでしょ?」
「……優しい人を、優しい人って言うのはいけないこと……?」
「そういう意味じゃないよ」
涙で滲んだ視界にクラレッドの顔を映そうとするけれど、涙の量を調整できない私はクラレッドの表情がよく見えない。
「優しいって言葉で線引きされると、俺はそこからディアナの内側に入っていけなくなる」
「……私の、内側?」
「うん」
涙の跡すらなかったことにしようと、クラレッドは私の涙をごしごしと拭ってくれる。
痛いって反抗しようとしたけれど、気づけば真っ直ぐな優しい瞳で私のことを見てくれるクラレッドを視界に映すことができた。
「ディアナは、無理をしすぎた」
クラレッドのこの瞳は、私をとても安心させてくれる。
どう生きていけば、クラレッドみたいに優しくなれるんだろう。
どうしたら、こんな風に心の底から湧き上がるような安心感を届けることができるんだろう。
「神様が、休むように命じてくれたんだよ」
治癒魔法とは名ばかりで、心にできた傷を治すことはできないと嘆く人がいる。
心の傷を癒すためにはどうしたらいいか。
学問として研究する人すらいるのに、クラレッドはいとも簡単に私の心に栄養分を与え始める。
「私……ロメウド様の役に立つことができたかな……」
「もちろん! 王子様だけじゃなくて、国民全員がディアナに感謝してる」
クラレッドはきっと、その優しさをもって私が飽きるまでずっとお話してくれる。
見えない未来のことだって、不安を抱く明日のことだって、クラレッドは私とお話をしてくれる気がする。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいんだって」
届くはずのない謝罪の言葉が零れ出すと、私の気持ちをすべて見透かしているかのようにクラレッドの瞳が私を心配する瞳へと変わってしまった。
ロメウド様の幸せとは、どういうものだったのか。
他人の幸せは、他人にしか答えを出すことはできない。
外部の人間がロメウド様の幸せとは何かを考えたところで、永遠に答えは導き出されない。
それでもロメウド様の幸せがなんなのか考えてしまうのは、私の日常にロメウド様が入り込んでしまったせいだと思う。
ロメウド様のいる毎日が、私にとっての当たり前だったから。
「……好きだった?」
熱を吸い取ってくれた木綿の布を交換するタイミングで私は目を覚ましたらしく、私は再びクラレッドと視線を交える。
「夢の中で、名前呼んでたよ」
それだけを伝えて、クラレッドは冷たさを取り戻した布を私の額に置いてくれる。
「優しいね……クラレッドは……」
「俺のこと、優しいって言葉で片付けようとしてるでしょ?」
「……優しい人を、優しい人って言うのはいけないこと……?」
「そういう意味じゃないよ」
涙で滲んだ視界にクラレッドの顔を映そうとするけれど、涙の量を調整できない私はクラレッドの表情がよく見えない。
「優しいって言葉で線引きされると、俺はそこからディアナの内側に入っていけなくなる」
「……私の、内側?」
「うん」
涙の跡すらなかったことにしようと、クラレッドは私の涙をごしごしと拭ってくれる。
痛いって反抗しようとしたけれど、気づけば真っ直ぐな優しい瞳で私のことを見てくれるクラレッドを視界に映すことができた。
「ディアナは、無理をしすぎた」
クラレッドのこの瞳は、私をとても安心させてくれる。
どう生きていけば、クラレッドみたいに優しくなれるんだろう。
どうしたら、こんな風に心の底から湧き上がるような安心感を届けることができるんだろう。
「神様が、休むように命じてくれたんだよ」
治癒魔法とは名ばかりで、心にできた傷を治すことはできないと嘆く人がいる。
心の傷を癒すためにはどうしたらいいか。
学問として研究する人すらいるのに、クラレッドはいとも簡単に私の心に栄養分を与え始める。
「私……ロメウド様の役に立つことができたかな……」
「もちろん! 王子様だけじゃなくて、国民全員がディアナに感謝してる」
クラレッドはきっと、その優しさをもって私が飽きるまでずっとお話してくれる。
見えない未来のことだって、不安を抱く明日のことだって、クラレッドは私とお話をしてくれる気がする。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいんだって」
届くはずのない謝罪の言葉が零れ出すと、私の気持ちをすべて見透かしているかのようにクラレッドの瞳が私を心配する瞳へと変わってしまった。