「あのね、ディアナ……そんなに莫大な医療報酬を患者さんからいただくわけにはいかな……」

「私は、医療業界を滅ぼすほどの力を持つ魔女だから」

「…………」

 
 好きな人と結ばれる未来を失った私の元に、新しい夢と希望が訪れた。


「私に治せない傷も病もないっ!」


 物語に出てくるようなお医者さんでもやらないような決めポーズでクラレッドが呆然と佇む方を振り向くと、クラレッドは仕方ないなぁと言ってくれそうな複雑な笑みを浮かべてくれた。


「それに、クラレッドが一緒にいてくれれば無敵だよね」

「じゃあ、結婚する?」

「え?」

「こんなに素敵な旦那を手に入れて、ざまぁみろって見返すことも可能だと思うけど」

「……そ、そういうことは……こほっ、こほっ」

「え!? ディアナ!?」

 大きな声を出してクラレッドの言葉を否定しようという予定は狂い、慣れない大声を出そうとしたおかげで喉が可笑しなことになった。


「喉に優しいお茶あったかな……」

「ごめんなさ……こほっ……」

「はい、落ち着いて深呼吸」

「ありがとう……」


 これは、すべてが仕組まれたところから始まる婚約破棄と聖女追放物語。

 何がどう仕組まれていたのかを語るのは……また別の機会といたしましょう。

 え? 私が誰なのかって?

 それもまた、いずれお話する機会があることを願っております。