「んー……今日も、良い天気」


 大きく伸びをして、太陽の光を目いっぱい浴びる。

 
「今日はトマトが収穫できるかな~」


 若くして命を落とした3度の人生を振り返ると、こんな風に青空の下で太陽の光を思う存分浴びる生活に毎日心をときめかせてしまう。


(牢獄の環境は、いつの時代も最悪だったなー……)


 太陽の光が届かない、暗く湿った環境下。

 罪を犯した人間に、自然の恵みは必要ないと言わんばかりの劣悪な環境。


(そもそも、私は何も罪を犯していないけど!)


 記憶を引き継いだ4度目の人生は、ローレリア・スフレインという令嬢として転生するところから始まった。


「育ってる、育ってる」


 ローレリア・スフレインには姉も妹も母もいたけれど、祖父母が私を溺愛していたことから血縁者との別れは早くに訪れた。


「桃もどきの果物も順調」


 祖父母に引き取られるかたちで人生を歩んできた私は令嬢であるにも関わらず、婚約者や婚約破棄といった類とは無縁の生活を手に入れることができた。


「こっちの野菜は、もっと大きく育ってほしいかな~」


 短い人生ではあったけれど、いろんな世界の、いろんな時代を生きてきた。

 それらの記憶をすべて引き継ぐことができたおかげで、適当に名付けた野菜や果実を育てる家庭菜園は今日も順調な成長を見せている。


「朝の水やりと経過観察終了」


 さっきから私の独り言が辺りにばら撒かれている理由は、私を家族から引き離してくれた最愛の祖父母が亡くなってしまったから。


「朝ご飯、朝ご飯~」

 
 私の言葉に返事をくれる人はいない。

 お金は……令嬢という立場上、生活に困らない程度は持っています。

 家族も婚約者も従者もお世話してくれる人も傍にはいないけれど、私は4度目の人生でようやく平穏な日々を手に入れることができた。