毒に耐性があると知ったのは、両親が私を毒沼に置き去りにしたとき。


「僕たちの仲間になってくれないかな?」


 毒沼に沈みつつあった私を引き上げてくれたのは、世界を救う勇者と呼ばれる存在の人でした。


「さっさと毒味してもらえる?」


 毒に耐性のある私ができることは、毒を感知すること。

 毒を中和すること。

 毒関連の魔法の盾になること。


「これは……大丈夫です……」


 魔王の手下との戦闘で、毒関連の魔法が使用されることはほとんどない。

 盾になる必要のない私は勇者のパーティで、勇者様が口にする食事の毒味係を任された。


「本当に愚図で鈍間なんだから」


 私は毒に耐性があるから、毒が混入されたご飯を食べても平気。

 けれど、勇者様は普通の人間。

 毒を、決して口にしてはいけない存在。


「今日もありがとう、アリアナ」


 勇者様の仲間からは気味悪がられた体質だけど、勇者様だけは私の体質を受け入れてくれた。

 どんなに過酷な戦闘の最中でも、勇者様は私に心配をかけないように気丈に振る舞った。

 私に対して笑いかけてくれる、そんな仲間想いの勇者様が私は大好きだった。


「あの……これ……毒が入って……」

「あなたって、毒を口にしても本当に死なないのね」

「…………」


 勇者様の仲間からは虐げられたけど、勇者様がいてくれたら頑張れると思った。

 でも……。


「ちゃんと毒味したんじゃなかったの!?」

「きちんと……しました……」


 毒味は、ちゃんとした。

 毒味が終わった食事を運ぶ途中で、勇者様が口にする食事に毒が盛られた。

 食事を運ぶ係が私だったら、そんなことは起こらなかったはず。

 でも、勇者様に食事を持っていく仕事だけはやらせてもらえなかった。

 私は勇者様の仲間たちの策略に、はめられたということ。


「じゃあ、なんで勇者様が昏睡状態に陥っているのよ!」

「申し訳ございません……」


 パーティメンバーの聖女様が懸命に治癒魔法を使うことで、勇者様は奇跡的に命を取り留めた。


「アリアナ」

「はい……」


 毒耐性を持っている私も、勇者様の体内から毒を抜くくらいのことはできる。

 けれど、勇者様の治療していいのは昔から聖女様か治癒師(ヒーラー)の方だと決まっている。

 毒耐性を持つ私は、勇者様のパーティでは用なしだった。


「君を、僕たちのパーティから追放する」

「……はい」


 勇者様のパーティを追い出された私は途方に暮れた。

 両親に捨てられたこと。

 勇者様の仲間たちの策略に陥れられたこと。

 2つの出来事を受けて、これから始まる新しい人生に喜びなんてものを抱くことはできなかった。