「リッカは何を食べたい?」

「私は、かしこまった食事じゃない方が好き」

「俺もリッカと同じで、アルフレズみたいに上品な生活を送っていないもので」


 街中を歩き回ると、子どもたちが私とアルフレズに向かって手を振ってくれる。

 英雄扱い悪くないと思いつつ、これからも子どもたちの期待を裏切るようなことはできないと自分を戒める。


「俺は、こういうときこそ高カロリーの食事を摂取するべきだと思うんですよ」

「トウマ、今日はリッカへの感謝を……」


 そもそも、聖女設定ってものが間違いだったような気がする。

 もちろんマジックボードを通して治癒魔法も使えるらしいけれど、あんな大爆発みたいな現象を起こした人間が聖女を名乗っていいのか疑問。

 後々に牢獄行きエンドとかありえそうで少し怖い。


「リッカ、顔色が優れないみたいだけど」

「アルフレズ様の好きな物にしましょう! 私、アルフレズ様のことを知りたいです!」

「そう?」


 ここは、乙女ゲーム『エンドレス・エタニティ』の世界らしい。

 攻略キャラクターとの恋愛フラグを立てつつ、世界を守りながら、私とトウマはハッピーエンドを目指していく。


「アルフレズ様!」

「うん、何か嫌いな食べ物とかがあったら……」

「例のことは誰にも言わないので、これからも私にご飯をご馳走してください」


 トウマに聞こえないように、ひっそりとした声でアルフレズに願いを託す。


「ああ、喜んで」

「お願い、成功です」

「リッカには敵わないな」


 脅しとも言えるかもしれないけど、これでアルフレズとの関係を絶たなくて済んだ。

 アルフレズとの関係が続かなければ、私は恋愛フラグを立てることすらできなくなってしまうから。


「俺を除け者にして、内緒話ですか?」

「私たちだけの秘密ですよね、アルフレズ様」

「えー、リッカを召喚したのは俺ですよ?」


 乙女ゲーム『エンドレス・エタニティ』、私が何百週目のプレイヤー(主人公)を担当しているのかは分からないけれど!


「ところで、トウマ」

「なんですか?」

「聖女設定やめたい……」


 私とトウマが望んでいるハッピーエンディングに向かって、今日も偽物聖女を頑張っていきます?