『アルフレズ様、私……もう……』


 これは、かろうじてR-18手前のレーティング設定がされている乙女ゲーム『エンドレス・エタニティ』……なんかちょっと頭が悪そうなタイトルだなと思ったのは秘密。

 どれくらい売り上げがあったのかも分からないし、転移前の私は存在も知らなかった乙女ゲーム『エンドレス・エタニティ』が舞台となっています。


『声、静かにできる?』


 人が通りかかるような場所で、このような行為に及んでいた1人目の攻略対象。

 言いたいこともたくさんあって、人生初の乙女ゲームがあまりにも過激すぎる内容で頭の中は大混乱。

 せっかく最強ゲーマーの才能を発揮するチャンスが訪れたと思ったら、いきなり最悪のエンディングを迎えたような気持ちになってくる。


「ちょっと、トウマ!」

「なるべく声は小さくお願いしますね」


 攻略対象その1であるアルフレズ・ロォの情事を覗き見している私たちは一体何者か。


「無理、無理、無理! 私、そもそも18歳を迎えていないから!」

「大丈夫ですよ。『エンドレス・エタニティ』は女子高生がプレイできる健全な作品ですから」

「いやいやいやいや、レイティング設定可笑しいから!」


 ひそひそ声で話すような内容ではないことは分かっている。

 分かってはいるけれど、隣でにこやかに事態を説明する彼の心は鋼のようにたくましくできていて正直引いてしまいそうになる。


「リッカは超マイナーゲームの世界ランク1位です。乙女ゲームの1つや2つ、楽勝にクリアしてくれますよね!」


 笑顔が黒い。

 いや、日本語として正しくないような気もするけど、私の隣で爽やかな笑顔を向けてくる彼の屈強な心臓を私に分けてほしいと切に願う。


『ブルネッツェル様、色よいご返事をお待ちしております』


 行為が終わった後、攻略対象1の彼は爽やかな声と清々しい笑顔でこう言った。


『アルフレズ様っ! 私、なんでも言うことを聞きますから!』


 彼がやっていた行為は、いわゆる枕営業というもの。

 体の関係を結んだ対価として、プレイヤー(私たち)が住んでいる国は安泰ということらしい。


(……枕営業をする乙女ゲーって一体……)


 足音を立てないように、私たちはこの場を後にした。