……サクラの守神(もりがみ)様。幼き頃から、ずっと、ずっと、どんな時もお慕いしておりました。ですが、このまま共に眠っても、何のお力にもなれないのでしょう?
 本当は、わかっておりました。だけど、信じたかった。最後の最期まで、信じていたかったのです。

 いつか耳にした、輪廻転生というものが存在するのなら、来世は、桜の木に生まれたい。
 毎年、サクラの花が終わる頃に、厄が訪れるというのなら、未来永劫、二度と散り()くことの無い、この村で一番大きなサクラに、私が成れば良いのです。
 そうすれば、誰も病で死なない。苦しめられない。大切な人を失うことも無い。私のように、顔も姿も見えぬ者に嫁ぐ、という娘も必要なくなる…… そうでしょう? そうなのでしょう?

 嗚呼(ああ)、嗚呼…… それすら叶わぬのなら、どうか、今すぐ私の身体を()にして、サクラを生やして下さいな。生まれたからには、活きたいのです。
 こんな闇の中ではなく、明るい陽の下で咲いて、精一杯、舞いたいのです。朽ちることなく、永久に。

 でなければ、私は、何の為に、あなたに嫁いで()くのですか……?



 ――(やく)に憑かれ、厄を(もちい)て、厄を制す。