瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)はその後、去来穂別皇子(いざほわけのおうじ)の元に行き、住吉仲皇子(すみのえのなかつおうじ)を討った事を報告する。

 その内容を受けて去来穂別皇子も、瑞歯別皇子の事を信用する事にした。


 そしてその数日後に、去来穂別王子が大王として即位する事となった。その際に葛城の黒媛(くろひめ)を皇后とし、さらに瑞歯別皇子を皇太子とした。

 住吉仲皇子の宮に使えていた者は、自身の里に帰る者もいれば、他の宮に移って仕える者もいた。

 佐由良は吉備海部より、引き続き大和に残って仕えるよう命じられる。

 そこで去来穂別大王より、佐由良は瑞歯別皇子のいる宮に仕えるよう言いわたされた。彼は、亡き父である大雀大王(おほさざきのおおきみ)の宮から南に下った所に若宮を建てて住んでいた。

 佐由良は、住吉仲皇子の暗殺に瑞歯別皇子が携わっていた事も聞かされていた。さらに瑞歯別皇子が佐由良を嫌っている事を去来穂別大王にも伝えた。
 だがそれにも関わらず佐由良はここに仕える事になってしまった。瑞歯別皇子も、大王の命令であれば逆らう事が出来ない。

 
 こうして新たに瑞歯別皇子の元に仕える事になった訳だか、佐由良の予想通り全くもって愛想が悪い。

 住吉仲皇子の宮にいた頃は、とても安心して宮仕え出来ていたが、ここでは余計な気苦労に悩まされていた。いつ瑞歯別皇子の機嫌を損ねるか分からないからだ。

 とりあえず、まだ嫌がらせがないだけマシだと佐由良は思うようにしていた。
 ただ同じ宮の采女の人達とは、以前いた宮のように上手くやっていけている。むしろ佐由良の境遇に同情する者さえいた。