
作品番号 1674018
最終更新 2022/08/23
菊花繚乱〜半妖あるじに菊の名を〜
秋の空/著
あやかし・和風ファンタジー
97ページ 完
総文字数/ 114,338
ランクイン履歴:
総合:100位(2022/08/30)
あやかし・和風ファンタジー:45位(2022/08/30)
三つの季節のゆくのを、父と十回見た。
十回目の冬の訪れを共に迎えることは叶わなかった。
艶めいた秋風に、父の声が散った。掌の温度が溶けていった。
父を送って程なくして、旦那さまに出会った。
旦那さまに連れられた先、無数の菊の咲き誇る屋敷で、寒菊さまに出会った。
優しい眼をした、美しいお方だった。
「お名前は」
「あやです」
「いい名だね。どんな字を書くのかな」
「綺羅の綺と」
「そうか」と、寒菊さまは私の頬を撫でた。
触れられて気がついた。
寒菊さまは、人間ではない。