「すごい……」
まず、私の目に入ったのは見たことがない機材の数々。
かろうじてわかるのは、パソコンくらいだが、たくさんのボタンが付いている横長の板みたいな機械には見覚えがあった。
「気になるものでもあった?」
「あ……それ……」
私は、その機械を指差しながら
「ニュース番組で、たまに……」
中学の時は、学校に行かない間ずっとテレビをつけっぱなしにしていたから、よく昼間に流れるニュースを見ていた。
そこでこんな機材を見たことがあったのだが、何に使うんだろう?と疑問に思っていた。
「これは、ミキサーっていうんだ」
「ミキサー?」
野菜や果物をジュースにするようなやつだろうか?
「違うよ」
「え?」
「今、台所にあるものを想像しただろう?」
「あはは……」
バレていたらしい。
「わかるー!私も同じこと思ったんだよね」
と、田村さんが私の背後から、可愛い、けど突き刺さってくるようなピンと張った声で主張してきた。
「まあ、考え方は一緒だよね。マイクや楽器からの音を、ここに取り込んで、調整して、混ぜて、聞かせるための機械だから」
「音を、混ぜる?」
どういうことだろう。
「まあ、百聞は一見に如かずって言うからな」
そういうと、立川さんは横にあるパソコンを立ち上げた。
「早速、選んでもらおうかな」
「何を、ですか?」
「お昼の放送で使う、音楽を」
「え?」
言われてすぐ、パソコンの画面に目をやると、たくさんの音声ファイルが並んでいた。
「この後、僕たちはお昼の放送をするんだけど」
「お昼の放送、ですか?」
「簡単に言えば、テレビやラジオのニュースの学校版、かな。私と立川先輩がアナウンサーしてるのー」
「そ、そんなことしてるんですか!?」
「できるよー!ね、立川先輩」
「ああ、僕たちは、そのために日々活動をしているんだ」
「す、すごい……」
中学時代には、決して知り得なかった世界だと、思った。
「それで、君には僕たちが話している間、バックで流す音楽をチョイスしてほしい」
「チョイス?」
「僕たちは、いろんな原稿を読むんだ。面白いニュースもあれば、真面目に読まないといけない原稿もある」
「へえ……?」
全くイメージができない。
田村さんがうんうんと大きく頷いているので、そういうものなのか、と無理やり納得させた。
「そんな、僕たちの放送のイメージに、ピッタリ合うような曲を選んで流して欲しいんだ」
「え!?」
ピッタリ合うような、曲?
ということは……。
私は、もう1度パソコン画面を見る。
知ってる曲よりも、知らない曲の方がずっと多い。
「ちょっと待ってください!私、そこまで音楽詳しくない……」
音楽を聴くのは好きだけど、その曲の条件はあった。
何でもかんでも、聞いてきた訳じゃない。
「私には無理です……」
と辞退しようとした時、どこからかアラームが鳴った。
「お、そろそろ時間だ」
「え?」
「じゃ、琴莉ちゃん、よろしくね」
田村さんはそういうと
「はい、今日の原稿はこれだから」
と私に手渡してから、すぐにもう1つ奥の部屋に入った。
ガラス越しに見えるそこは、これもニュースでよく見る、声優さんやナレーターさんが収録をしているときに使う、プロの空間だと思った。
ブース、と書いてあった。
「ど、どうしよう……」
「大丈夫。僕たちは、この曲のほとんど知らないまま、適当に流してたんだから」
そう言って、立川さんもブースの中に入っていた。
「ど、どうしよう……」
ここで、部室から逃げる方が、正しいのかもしれない。
でも……。
私は、渡された原稿に目を通す。
春休みの部活動報告と、書かれていた。
賞と取ったとか、インターハイで3位に入ったとか、おめでたい話題ばかりが並んでいた。
こういう時に聴きたい曲は、心から明るくなれる曲だろうな、ということはすぐに分かった。
私は、もう1度パソコンに目を通す。
私が知る中で、この気分を表すことができる曲は、すぐに見つかった。
それは、今朝私がちょうど登校中に聞いていた曲で、アイツのお気に入りの曲でもあった。
それ以外、何も思いつかなかった。
まず、私の目に入ったのは見たことがない機材の数々。
かろうじてわかるのは、パソコンくらいだが、たくさんのボタンが付いている横長の板みたいな機械には見覚えがあった。
「気になるものでもあった?」
「あ……それ……」
私は、その機械を指差しながら
「ニュース番組で、たまに……」
中学の時は、学校に行かない間ずっとテレビをつけっぱなしにしていたから、よく昼間に流れるニュースを見ていた。
そこでこんな機材を見たことがあったのだが、何に使うんだろう?と疑問に思っていた。
「これは、ミキサーっていうんだ」
「ミキサー?」
野菜や果物をジュースにするようなやつだろうか?
「違うよ」
「え?」
「今、台所にあるものを想像しただろう?」
「あはは……」
バレていたらしい。
「わかるー!私も同じこと思ったんだよね」
と、田村さんが私の背後から、可愛い、けど突き刺さってくるようなピンと張った声で主張してきた。
「まあ、考え方は一緒だよね。マイクや楽器からの音を、ここに取り込んで、調整して、混ぜて、聞かせるための機械だから」
「音を、混ぜる?」
どういうことだろう。
「まあ、百聞は一見に如かずって言うからな」
そういうと、立川さんは横にあるパソコンを立ち上げた。
「早速、選んでもらおうかな」
「何を、ですか?」
「お昼の放送で使う、音楽を」
「え?」
言われてすぐ、パソコンの画面に目をやると、たくさんの音声ファイルが並んでいた。
「この後、僕たちはお昼の放送をするんだけど」
「お昼の放送、ですか?」
「簡単に言えば、テレビやラジオのニュースの学校版、かな。私と立川先輩がアナウンサーしてるのー」
「そ、そんなことしてるんですか!?」
「できるよー!ね、立川先輩」
「ああ、僕たちは、そのために日々活動をしているんだ」
「す、すごい……」
中学時代には、決して知り得なかった世界だと、思った。
「それで、君には僕たちが話している間、バックで流す音楽をチョイスしてほしい」
「チョイス?」
「僕たちは、いろんな原稿を読むんだ。面白いニュースもあれば、真面目に読まないといけない原稿もある」
「へえ……?」
全くイメージができない。
田村さんがうんうんと大きく頷いているので、そういうものなのか、と無理やり納得させた。
「そんな、僕たちの放送のイメージに、ピッタリ合うような曲を選んで流して欲しいんだ」
「え!?」
ピッタリ合うような、曲?
ということは……。
私は、もう1度パソコン画面を見る。
知ってる曲よりも、知らない曲の方がずっと多い。
「ちょっと待ってください!私、そこまで音楽詳しくない……」
音楽を聴くのは好きだけど、その曲の条件はあった。
何でもかんでも、聞いてきた訳じゃない。
「私には無理です……」
と辞退しようとした時、どこからかアラームが鳴った。
「お、そろそろ時間だ」
「え?」
「じゃ、琴莉ちゃん、よろしくね」
田村さんはそういうと
「はい、今日の原稿はこれだから」
と私に手渡してから、すぐにもう1つ奥の部屋に入った。
ガラス越しに見えるそこは、これもニュースでよく見る、声優さんやナレーターさんが収録をしているときに使う、プロの空間だと思った。
ブース、と書いてあった。
「ど、どうしよう……」
「大丈夫。僕たちは、この曲のほとんど知らないまま、適当に流してたんだから」
そう言って、立川さんもブースの中に入っていた。
「ど、どうしよう……」
ここで、部室から逃げる方が、正しいのかもしれない。
でも……。
私は、渡された原稿に目を通す。
春休みの部活動報告と、書かれていた。
賞と取ったとか、インターハイで3位に入ったとか、おめでたい話題ばかりが並んでいた。
こういう時に聴きたい曲は、心から明るくなれる曲だろうな、ということはすぐに分かった。
私は、もう1度パソコンに目を通す。
私が知る中で、この気分を表すことができる曲は、すぐに見つかった。
それは、今朝私がちょうど登校中に聞いていた曲で、アイツのお気に入りの曲でもあった。
それ以外、何も思いつかなかった。