相手チームに頭を下げ、握手を交わしたときには、もう涙腺がバカになっていた。視界がボロボロに割れて、あとからあとから涙がこぼれてくる。
 勝ちたかった。私、みんなと一緒に、勝ちたかったんだ、この試合。
「う……うぅ……」
 ベンチに帰りながら、赤いリストバンドで何度も何度も目を拭う。
「でも、トーナメントに上がれたの、すごくない?」
「即席チームとは思えないよね」
「ていうか、荘原さん、シュートのフォームきれいすぎるんだけど」
「今日決めたシュートの数々、すごかったよね」
 階段をのぼりながら、北見さんと根津さんが私にいっぱい話しかけてくれる。負けて泣いている幼い私に比べて、彼女たちはなんて大人なんだろう。
「ごめんね」
 そう言えば、
「なしなし、そういうの」
 と返ってくる。
 私は頷きながら、思った。大事だったのは、試合でシュートを入れる経験じゃなかったのだと。私に必要だったのは、シュートを入れられなかった私を受け止めてもらえる経験だったのだと。
「ホント、この短い期間で頑張ったよ、荘原さん。おつかれ!」
仲間として、結果だけじゃなく経過を認めてもらえる経験だったのだと。
 涙を拭いた私は、
「ありがとう」
 と、心を込めて言った。
「こちらこそ、本当にありがと。参加してくれて助かったし、マジで楽しかった」
「そうだよ。ありがとうね、荘原さん」
「先輩、ありがとうございました!」
 ありがとうの言い合いを繰り返し、みんなで笑い合う。
 マネージャーというサポート役としての一員とは違う、同じボールを追いかけるチームの仲間としての労いや感謝に、胸が熱くなる。そして、まるで初めて体験するこの感情に、私は、失敗成功勝ち負け関わらず、みんなと一緒になにかをやり遂げることを怠ってきたんだということを悟った。
だから、九条先輩に、小学生のときで止まっていると言われたんだ。
「よく頑張った!」
 藍川先生に拍手で迎えられ、みんなで2階席へと向かう。後半部分だけ私たちの試合を見ることができたらしい男子たちも、手を叩いて頑張りをねぎらってくれた。政本君も、うんうんと頷きながら笑っていた。
 私は、その後みんなが落ち着いてから、先生に頭を下げて言った。
「このまま部員として引退試合まで参加させてください。わずかな間だけだけど、頑張りたいです」