私という人間は断ることが最も苦手だ。

子どもの頃は今よりは快活だった。

良く笑い、よく話す、田舎で生まれ育ったからか、みんなが私を知っていて、私もみんなを知っていた。テレビで見る都会への憧れはあったけれど、それは「テレビの世界」であり、私自身は田舎が嫌いではなかった。

そんな私は高校入学時に親の転勤で都会へ引っ越した。
数年前の私だったら、少し不安ながらも新しい生活へ希望がいっぱいだっただろう。
でも、その頃の私には快活さは存在しなく、ビクビクと怯え周りを伺う人間になっていた。田舎はみんなに監視されているようで本当に恐ろしくなってしまっていた。
それは思い出したくもないあることが原因だった。
だから、転勤は監視から逃れられる安心感を与えた。希望ではなく安堵だけだった。

誰もが嫌われたくないと思う。それは当然である。
私も新しい土地で自分のことを誰一人として知らないのだから、やり直しがきくと考えていた。
けれど、自分から積極的に行動を起こすことはなく、嫌われもしないけれど好かれもしない、空気のような存在でいることが何よりも安心できた。
高校で友達を積極的に作ることすらしなく、息をひそめて過ごしていた。

2年生になってしばらく経ったある日、クラスの女子に「用事があるから代わりに委員会に出てくれない?」と頼まれた。苗字は知っているけれど下の名前もわからない、言葉も交わしたこともない子だった。
でも、悪い人には思えないしクラスでも「普通」のカテゴリーに属する子で、本当に用事があって困っていたけれど、頼る人が誰もいないから私に仕方なく頼んでいるのだろうと思った。
だから「わかったよ」と笑顔で引き受けた。
まともにクラスの人と話すのは初めてだったから、上手く笑顔が出来たかはわからないけれど、彼女は「助かるー、ありがとう」と申し訳なさそうな笑顔を返してきた。

それから彼女は結構な頻度で「代理」を頼んでくるようになった。
委員会は文化委員で、普段は特に活動が頻繁ではないようだけれど、まもなく学校祭があるから、年に一度のその時だけ忙しくなるようだ。週に何度か委員会が行われていた。

ほぼ毎回、代理出席を頼んでくるので、少し面倒だし内容をノートに細かく書いて彼女に渡さなければいけないのが億劫だった。
でも嫌だと言って、波風が立って妙に注目されるの方がもっと嫌だし、彼女はバイトが忙しくシフトが増えてしまったから出席できないのだと、本当に困った様子だったから悪気はないのだろう。
学校祭というイベントのせいで皆忙しいのだ。困っているから断ることはできない。だから承諾していた。


ここまで本を読んで気が付いた。

私の人生の物語だけれど、私は「アサコ」と表現されていて、主観で話が進んでいるのではなく、客観的に誰かが書いた小説のようになっている。

私が文化委員を断り切れないで承諾していることも
「アサコは余計な注目をされたくない気持ちで引き受けていたのだ」
という様な表現になっている。
だから私の物語に出てくる登場人物の背景や気持ちなども描写されている。



読み進めていると、代理を頼んでいる彼女はバイトなどしておらず、他校にできた彼氏と遊びたいがために一番どうでもいい存在の「アサコ」をターゲットにしており、学校内では私が詳細に書いた委員会の内容で、誰にも何も思われずに活動していると信じられていた。
彼女は私のことを彼氏に「便利屋」と言っており、それはやがて彼女の口からクラス内に広まることになる。

「柳さん、お願いがあるんだけど」「柳さん、ちょっといいかな?」

クラスの女子にやたらと声をかけられることが増えていく。
私の名前がほぼ毎日何かしらで連呼されるのがたまらなく嫌だった。
頼まれることは大体どうでもいいことばかり。日直、掃除当番、資料運びなどの雑用。
波風だけは立てたくないから、何でもかんでも「いいよ」と引き受けていた。

クラスのトップのグループの派手な女子たちは私のことなど、どうでもいいらしく

「柳って誰?」「あー、便利屋?あれ柳っていうんだー」

という声が聞こえるくらいだった。

便利屋という私に彼女たちは用事すらない。
「トップ」が頼まれた面倒くさいことを「普通」が押し付けられ、それを「便利屋」の私が最終的引き受けているのだから、末端の下請けの私なんか大企業のような彼女たちが知る意味すらないのだ。

やがて学校祭が近づいてきて、学校祭の実行委員会が主体になる委員会へシフトチェンジされていく。
実行委員会はほぼ毎日会議を開き、便利屋の私は当然代理で参加せざる得なくなっている。
実行委員は学校でも目立つ人間が主体で成り立っており、各学年やクラスのトップ達が集まり、学校祭というお祭りをいかに自分たちが満足できるかを勝手に決めて盛り上がっていく。
トップ達が私をどうでもいいように、そのお祭りは私には同等以上にどうでもよかった。

その実行委員長が植松先輩だった。
顔が良く、背が高く、性格も優しく、爽やかで文武両道な植松先輩は「植松信者」という女子たちがファンクラブを作るほど圧倒的な人気と地位を持っていた。
私でも名前と顔を知っているくらいな、この学校を象徴するかのような存在だ。
「植松信者」たちは学校で目立つ人間しか名乗れず、憧れを口に出来る一般生徒は少ない。

私にはそんな雲の上の存在である植松先輩も「植松信者」も自分には関わりがない人間達なのだから、本当にどうでもよく、早く委員会の代理出席が終わることばかりを考えていた。



自分の物語を小説の気分で読んでいた私は、知りたかった「謎」のキッカケにやっと気が付いた。

「この時からだ……」

何個目かのクッキーを手にしたまま、すっかり忘れてしまっていた出来事を思い出す。

自分のことなのだから、この先は読むのがうんざりしそうなものなのだけれど、私の主観ではなく、本の中の「柳アサコ」に起こっている出来事に思えて、なんだか他人事に見える。映像ではなく文章だから余計にそう思うのかもしれない。
同姓同名の主人公に起こるこれからの数々の不幸を、私はアップルティーを飲み、クッキーを口に運びながら読み進めていく。



ある日「アサコ」に不幸が突然降りかかる。

それは、いつも通りに便利屋として代理で出席している実行委員会の会議中。
自分に与えられた代理の役割を黙々とノートを取りながらこなしていると、

「文化部の展示の件ですけど……、文化委員、そこの女子は2年生かな?展示の見取り図は持っているかな?」

植松先輩が言っている。

私は自分が声をかけられているなんて全く思っていないから、ノートしか見ていない。

「えーと、そこの髪の長い女の子。ノートを取っているキミなんだけど」

困った声と、やたらと視線を感じて顔を上げた。
みんなが私を見ている。なぜだろうか?人に見られるのは好きではないから困惑する。

隣の席の男子が「植松先輩が聞いてるよ?」と小声で言った。

「はい…?」

「文化委員だよね?展示の見取り図を見せてほしいんだけど。あ、ごめんね。名前は?」

苦笑いしながら植松先輩は言った。

「柳アサコです……」

渋々と名前を言う。そして、私は代理なんだから見取り図なんか知るわけがない。
でもそれを言うと、頼んできた彼女も後で困るだろうし、どうしようかと考えた。

「柳アサコさんね、教えてくれるかな?」

「あの……すみません。忘れました。ごめんなさい」

うっかり私が忘れたことにしてしまえば、波風は立たない。私のミスであり、本来の委員の彼女に迷惑はかからないであろう。そして他のクラスの文化委員に聞き直すはずだ。

そう思ってまた下を向くと「ブハ!!」と植松先輩が吹き出した。
怪訝に思ってもう一度顔を上げる。

「柳さんって本当は文化委員じゃないよね?だって委員の子と名前違うから。いつも何でいるんだろうって思ってたんだ。押し付けられちゃったの?」

植松先輩はお腹を抱えながら笑っている。

何が面白いのか。
代理がバレてしまっては彼女に迷惑がかかる。こっちは面白くもなく、困っている。

「いえ……、私が途中から文化委員になったんです」

嘘だけど、もう彼女が委員会に出席する感じはないから、いっそ私が文化委員になったことにしてしまおう。

「アハハ、柳さんっていい人なんだね。顔も可愛いけど性格も優しいんだね」

周りがザワっとなる。
女子たちの嫌な視線が突き刺さる。やめて、私のことは構わないで、迷惑だから。

「柳さん、これからも委員会よろしくね。じゃあ、見取り図は3年の文化委員長の……」

私を見てニッコリと植松先輩は笑い、そして話を別な人へ向けた。

学校の、学年の、クラスの「トップ」の女子たちが私を睨みながらヒソヒソと話をしている。
やめて。本当に迷惑。私は悪くないから、お願いだから私に注目しないで。
女子たちと視線を合わせないように下を向いたけれど、額にジットリと嫌な汗が浮かんだ。

その日だけは、「植松先輩に名前覚えられたんじゃない?」とチクチクと言われたけれど、次の日には私の話題すら出なかった。


何事もなく、数日間を便利屋以外はのんびりと過ごしていたが、ある日、見えないようにジワジワ下準備をしていたらしい「大企業」であるクラスのトップの女子3人が声をかけてきた。


「柳さーん」

お昼を食べに視聴覚室へ行こうとしたらトップ3人が声を掛けてきた。
私はお昼は誰も寄り付かない視聴覚室で1年生の頃から食べている。

トップが私の名前を知っていることに多少驚きはしたけれど、「便利屋は柳」くらいの認識はあるのかもしれない。
どうせ呼び止めたのだって面倒くさい用事を押し付けるためだろう。

私が黙っていると

「お昼一緒に食べない?」

と、わけのわからないことを1人が言い出した。

「は?」

思わず口に出てしまう。
仲間に入れてもらえる!なんて思うはずもなく、空気のようにありたい私にはこれ以上の迷惑はない。

そして3人を見ると学校祭の実行委員の子がいた。
無論「植松信者」と堂々と名乗りをあげても文句を言われない人間。

この間の植松先輩のことでも聞きたいのか?
あなたも見ていたろうけれど、植松先輩はからかっただけで共通点すらないのは見てわかるだろう。何を考えていて、何をしたいのだろうか?

そして断ることが出来ない私は3人に引っ張られて中庭に連れ出された。
あちこちにベンチがあり、結構な生徒がお昼を食べている。

比較的体格のいい子が「空いてたー!植松ポイント」と言いながら、ベンチが二つ並んでいる場所を陣取った。

「植松ポイント」?なんだそれ。
私の顔が相当不可解な顔だったのだろう、頭の良さそうな子が説明する。

「植松先輩は毎日ここでお昼を友達と食べているの。席もいつも決まっているから、ここが一番植松先輩を見れるから『植松ポイント』って呼んでるんだ」

「へー……」

世界一どうでもいいことを聞いた気分になる。

とりあえずベンチに腰をかけると、本当に真向かいで植松先輩が友達とご飯を食べている。さすが「植松信者」。

お弁当を広げて食べようとした時に、植松先輩が「あー!」とこっちを指さした。

私もビックリしたけれど、それより「信者」たちが「植松先輩ー!!」と近寄っていき、体格がいい子が見事に私の弁当を落としていった。偶然ではなく、あきらかに身体をぶつけてきたから厄介だ。弁当はなくなるし最悪。

先輩は「信者」たちを押しのけ、私の前にきて「うわー、酷いな」と言った。
それから3人に向かって

「あのさ、君たちワザと柳さんの弁当落とさなかった?俺にはそう見えたんだけど」

と言った。
3人は慌てて否定をしている。
私はそれよりも、名前を覚えていたことに驚いた。

私が落ちた弁当を片付けているのを植松先輩も手伝ってくれて、

「柳さん、お昼ないよね?学校の近くで買ったサンドイッチだけど、これで我慢してもらえる?」

と、自分のベンチからわざわざパン屋の紙袋を持って来てくれた。

「え?いや、購買で買いますから大丈夫です!」

真っ赤になりながら首を振る私を見て、植松先輩はクスって笑ってから言った。

「購買ではこの子たちに今度奢ってもらいなよ。ワザとに見えたけど、言い過ぎかもしれなかったね。ごめんね?でも柳さんにはしっかり謝罪しなよ」

そう言って彼女たちにも笑いかけると、取り乱しながら「すみません!」と全員逃げてしまった。

「あーあ、逃げちゃった。じゃあ、一緒に食べようか?」

隣のベンチに座り、植松先輩とお昼を食べた。
サンドイッチは都会の味がした。すごく美味しかった。

男子となんて田舎いた頃の幼馴染のアイツや中学時代の男子しか話をしたことがなかったから、緊張して私の顔はずっと真っ赤だっただろうと思う。

私はこれがキッカケで植松先輩から会ったら声をかけられたりして仲良くなったんだ。

それと同時に、やっぱり植松先輩と仲良くするものだからトップたちにイジメられるようになった。




『アサコと植松はこれがキッカケで仲が良くなった』

本の文章を読んで、あー、そうだった。これで変に目立ってイジメられたのか。と思っていたけれど、その前に植松先輩の話が出てきている。
何度も言うが、これは私主観の物語ではなく、関わった人間の思想、思惑も出てくる。



トップたちが私の弁当を落とし、植松先輩とお昼を食べた日の放課後の話が出ている。

実行委員会が使う会議室で資料を読んでいる植松先輩と例の3人が会話をしている場面だ。

「やりすぎましたかねー」

体格のよいあの子が植松先輩に言っている。

「いや?あのくらいしてもらわないと、柳さんは警戒心が強そうだからね」

資料と閉じて先輩はクスクスと笑った。

「なんで先輩は柳に興味あるんですか?」

そう聞かれると、爽やかな笑顔しか見せない先輩が嫌な笑いをする。

「暇つぶし。善人を保つのは大変なんだよ?このくらい遊んでも罪はないじゃん。柳さん出身はかなり遠い田舎らしいし、友達もいないしかばってくれる人なんかいないでしょ?あ、俺が一応かばうけど。遊びは緩急が大事だからね」

そうして3人に財布からお金を渡すと

「引き続きよろしくね。まあ、死なない程度にね」

と言った。



そうしてイジメが始まり、先輩の指示でエスカレートしていく。

私がしこたまやられた後に先輩は登場し、彼女たちを怒るのだ。

「大丈夫?」

と、私を心配し、優しくして笑顔を向ける。

ある日、お昼に誘われた時に「柳は笑顔が可愛いね」とさりげなく言われ、私には先輩はヒーローのようだった。恋心も若干生まれたほどに。


田舎にいた頃の私を知っている人間は、イジメられて根暗で人見知りをし常にビクビクした生活を送っているなんて信じられないだろう。
私はそんな性格ではなかったから。

幼馴染4人で仲が良く、悪さと言っても何もない田舎での悪さなんて小学生がやるようなことだ。そんなことをして先生や周りの大人に怒られ「この子たちは元気がすぎる」と、笑ってくれていた人たち。
その中で私たちは「最強!」と笑い合っていた。

あの3人は今頃どうしているのだろう?
あんなに仲が良かった私たちは、とても嫌な終わり方をして疎遠になった。
忘れようと思っていたけれど、今更気になってくる。

ウタカタは「今日は4人ここにくる」と言った。
私も含めて、幼馴染が揃うとか?
そんな偶然あるわけがない。出来過ぎにもほどがある。ない、絶対に。


そして私が命を絶った日になる。

その日は学校祭の最終日。

学校に行けば酷い目にあうし、私をイジメているような人間が楽しむお祭りなど行きたくもない。以前はどうでもよかったイベントが憂鬱という負荷をつけたのだから、参加したいわけがない。

学校祭は3日間あり、2日間は家を出て最寄り駅の近くにある図書館で終わるまで時間を潰した。

でも、最終日は生徒は強制参加で無断で休んだ生徒の家には電話が来るという。
仕方ない。行くしかない。学校の目立たない場所に身を潜めていれば終わるだろう。
そう思って、重い足を引きずるように登校した。

私がサボっていた2日間で、植松先輩は例の3人を呼び出し

「もう柳に飽きた」

と、言った。

3人はそう言われて困惑する。
飽きたのならイジメはやめて、また存在しないような扱いをすればよいのかと。

「柳さんね、この間俺に『辛いから死にたい』って言ってたよ?望み通りに死なせてあげたら?」

この言葉に3人もさすがにギョっとして

「え?私たちが柳を殺すとか……?先輩、それはさすがに冗談きついです」

と、1人が声を震わせて言った。

先輩は自分のクラスの出店のはっぴを着ながら、うちわで呑気にパタパタとあおいでいる。

「別に殺せとは言ってないよ?本当に死にたいくらい痛めつけて、自殺でもさせたらいいんじゃない?」

「どうやって……?」

「まあ俺の暇つぶしを君たちがしてくれたんだから、最後くらい俺が柳の背中をポーンと押してあげるよ。お疲れ様、もう楽になっていいよってね」

植松先輩はそう言って、いつもの爽やかな笑顔を3人に向けた。


そんなことを知らずに私は最終日に登校し、人気のない資料室で本を読んで時間を潰していた。

先輩にこぼした通り、イジメの毎日に疲れ果てて『死んでもいいかな』と思っていた。

田舎でのあの出来事から私はあまり生きている意味も感じていなかったけれど、もういいかな?キッカケさえあれば死ぬのだろうとは感じていた。
その死へのボタンは何なのだろうか?それはわからなかった。

ドカドカと足音が聞こえて、資料室のドアがバンと開いた。

3人が息を切らせて「柳!やっと見つけた」と言う。
いつものようにニヤニヤとはしていない。
学校祭だというのに息を切らせてまで私を探す意味がわからない。

「お前、こんな所に隠れてぶざけんなよ!来いよ!」

体格のいいあの子が私の髪を掴んで引っ張る。

「痛いよ、こんな日くらい放っておいてよ」

私が言うと、思いきり蹴っ飛ばされた。

引っ張られながらそばにある女子トイレに連れて行かれた。




それで私は今までにないくらい痛めつけられ、ヒーローだと信じていた先輩に見捨てられ、死のボタンを押して、今この『狭間』という空間にいる。

『柳アサコ』の物語はここで終わっている。
終わってはいないけれど、続きはここへ来た時の話になっている。

信じてた先輩に裏切られ、自殺に追い込まれたのだから涙が出るくらい悔しいとか、恨みの感情が出てもいいのだけれど全く何も思わない。

田舎で近所のおばあちゃんが言っていた。

「悪いことをしたら神様は罰を与えるんだよ。それは逃げられないことだから、悪いことはしたらダメだよ」


あー、そういうことなのか。
私は田舎で『悪いこと』をした。とんでもないことを。
だから神様は罰を与えた。
それだけのことだ。
悪いことをしたんだから罪を償えということがこれだったのか。

なんだか妙に納得してしまう。
そして自業自得なんだと理解した。

私は罰を受けた。
では、あの幼馴染3人も罰を受けるのだろうか?
もしかしたら私より先に受けたのだろうか?


アップルティーを飲みながら考えていると、

「読み終わりました?」

ウタカタが声をかけてきた。

「はい。何だか妙に納得しました」

私は素直に言うと、ウタカタはニッコリと笑った。


「そうですか。あ、間もなく2人目の方がいらっしゃいます。アサコさんはここでしばらく待っていてくださいね」

そう言ってウタカタは歩いて行った。


2人目ね……どんな人が来るんだか。
まあ、そこまで興味はないから少し寝ようかな。


そう思って、寝転がって私は目を閉じた。