ソファに並んで座ると、まとまらない言葉で今まであったことと、自分の思いを伝える。

「なるほどね……」

瑞希ちゃんは難しそうな声で呟く。瑞希ちゃんの言葉に甘えすぎたかもしれないと反省する。

「えんは笠木が手術しないって言ってることに納得してるの?」

首を左右に振って否定する。

笠木さんは今生きている時間を大切にしたいと言っていたが、私はこれからも笠木さんと生きていきたい。

納得なんか、していない。

「じゃあ、説得してみなよ。笠木の意思は固いのかもしれないけど、言わなかったら何も変わらないじゃん」

そうは言うが、一度泣きながら説得のようなものをした。そのときに、大切な人と過ごす時間を大事にしたいと言われたのだ。

私が説得したところで、何かが変わるとは思えない。

「それか、もっと生きたいって思わせるとか」

瑞希ちゃんは名案と言わんばかりに人差し指を立てた。

その案は賛成だ。

「どうすればいいのでしょう……?」

しかし方法が思いつかなかった。

「さあ?でも、それができるのはえんしかいないんじゃないかな」

瑞希ちゃんは立てていた指を私に向けた。私はその指を折り曲げる。

「私だけ、ですか……」
「好きな人とずっと一緒にいたいっていう気持ちは、笠木も同じなんじゃないかなって思うんだよ」

瑞希ちゃんは拳に変わった右手を降ろし、腕を組んだ。そして一人で納得し、頷いている。

「とりあえず、えんも笠木と過ごせる時間を楽しんでみたら?」

私が抱えていた悩みの解決策を提案してくれた。瑞希ちゃんは冗談を言っているようには見えない。

「……いいんでしょうか、楽しむだけで……」

しかし私は少し不安だった。

それは、何もせずに過ごすことと変わりないからだ。

「えんは笑ってたらいいんだよ。それが笠木を元気付けるかもしれない」

瑞希ちゃんは断言しなかった。だけど、間違っているとは思えなかった。

笠木さんと過ごした時間は、本当に楽しかった。笠木さんも楽しんでくれていたように思う。

しかしながら、瑞希ちゃんのアドバイス通り、笑顔で過ごしたい気持ちはあるが、心から笑える自信はなかった。

きっとまた、今日と同じことで苦しむ。

笠木さんが生きたくないと言っていることを思い出して、胸が張り裂けそうになるだろう。

私に、耐えられるだろうか。

「あー……余計悩ませた?」

私が口を噤んだせいで、瑞希ちゃんはつらそうな表情をした。

「……いえ」

他人に相談して答えをもらっても、受け入れられないのは私の悪い癖だ。同じことで悩み続けていては、前に進めるはずがない。

「ありがとうございます、瑞希ちゃん」