翌日大学に行くと、校門で私を見かけた由依ちゃんは、私に駆け寄ってきた。

切羽詰まったような表情で、私の両腕を掴んだ。

「円香ちゃん、笠木くんとは会えた?ちゃんと、話せた?おうちは大丈夫だった?」

口を挟む間もないくらいの勢いで、私は少し戸惑う。私が答えられないでいることに気付いた由依ちゃんは、少し離れた。

「ごめん……なんか、メールしづらくて、つい……」

そういえば、由依ちゃんにも瑞希ちゃんにも連絡していなかった。正直それどころではなくて、忘れていた。

「大丈夫ですよ。しっかり話し合って、認めてもらいました」

すると、安心した笑顔を見せてくれた。

「でも、それって本当に大丈夫なの?その、婚約者さん、とか……」
「……多分?」

はっきりと言い切ることもできなくて、首を傾げながら答えた。

それがおかしかったのか、由依ちゃんは吹き出した。それにつられるように、私も笑う。

「わからないんだね。でも、円香ちゃんが元気そうでよかった」

由依ちゃんは安堵の溜息を零した。

由依ちゃんのこの優しさは、本当に癒される。

「笠木くんには、これからも会いに行くの?」

頬を緩めながら頷く。

「よかったね」

心から笑ったのは、何年ぶりだろう。そう思うくらい、気持ちが軽かった。



講義が終わると、病院に向かった。

笠木さんの病室に着くより前に、休憩所で他の患者さんと話している笠木さんを見つけた。

笠木さんは円の中心にいて、笠木さんと話している人たちはみんな笑っている。

遠目で笠木さんを見ていたら、誰かに肩を叩かれた。

「こんにちは、小野寺さん」
「汐里先生……?どうして……」

背後にいたのは汐里先生だったけど、私はどうしてこの時間帯に汐里先生がいるのか、不思議でならなかった。

今日は平日で、仕事があるはずだ。

「ああ、そういえばまだ言ってなかったね。私、養護教諭辞めたの」

あまりに自然に言うから、思わず聞き流してしまうところだった。

「辞めたって……」
「もともと、玲生くんが通ってたから、あの学校に勤めてたの」

それを聞いて、質問を重ねようとは思わなかった。

「今はバイトしながら、恵実さんと交代で玲生くんのお見舞いに来てるんだ。まあ、恵実さんは無理して毎日来てるけどね」

汐里先生は苦笑した。