思い当たる節がありすぎる。

反対されるとわかっているから、好きではないと嘘をついた。笠木さんに迷惑をかけるからと、会いに行こうとしなかった。

今だってそうだ。私がお嬢様だから、笠木さんに会うことが許されないと自分に言い聞かせ、行動しようとしていない。

奈子さんの言う通り、行動できないのを、自分の立場のせいにしている。

「笠木さんに会いに行ってもいいのかな……」
「もちろんです」

力強く肯定してくれた。たったそれだけのことなのに、気分が軽くなった。

シチューが温まったのか、奈子さんは牛乳を入れている。

「でも、鈴原さんとお父様が、私のことを見張ってて……」
「お嬢様、それは言い訳ですよ。変装するとか、手段はあります」

また言い訳をしたことは認めるが、変装したくらいで騙されてくれるだろうか。

「……いや、ないか。旦那様も鈴原さんも、信じられないくらい過保護ですから、GPS機能を使ってる可能性もありますね」

そう言われて、鞄の中を漁り、スマホを出した。遅いかもしれないが、電源を落とす。

これで私の居場所があの人たちに伝わらないとは思えないが、やらないよりはマシだと思った。

「……奈子さん。明日、服貸してくれる?」

奈子さんは無理だと言っていたが、想像だけで無理だと決めてしまえば、今までとは変わらない。

恐る恐る尋ねると、奈子さんは満面の笑みを見せた。

「はい」

奈子さんに厳しいことを言われ続けていたせいか、その笑顔を見て胸をなでおろした。

それから奈子さんと帰ってきた奈子さんの旦那さん、私の三人で食卓を囲んだ。



奈子さんの旦那さんを送り出すと、奈子さんは私に似合う服をたくさんタンスから出した。

「お嬢様に見えないようにするなら、ボーイッシュな感じかな……」

奈子さんは手に取ったものを遠目で私に合わせては、床に置いていく。

いくつか試した中で納得のいく物があったらしい。

白シャツに黒いベスト、ダメージジーンズとシンプルだけど着たことない服だ。

それを渡され、着てみる。

奈子さんの部屋に全身鏡があり、その前に立たされる。

「悪くないですね。髪はキャップの中に入れて、誤魔化しましょう」

奈子さんは私の後ろに立ち、黒いキャップを私に被せた。

すると、奈子さんはくすくすと笑った。

「なんだか、懐かしいですね」
「……うん」

私たちは顔を合わせて笑った。

奈子さんの服を身にまとい、病院に向かった。笠木さんの病室に着こうというときに、見覚えのある姿が部屋に入っていった。

私は慌てて曲がり角に身を隠す。

「なんで鈴原さんがここに……」

心臓の音がうるさくなる。

携帯の電源は切った。変装をしているから、後をつけられている可能性は低いはずだ。